平成23年度正常家兎(WT)、家兎硝子体中へ薬物を注入し視細胞からの伝達を薬理学的に遮断した家兎を作成し、対光反射測定、網膜組織確認を行った。さらに24年度は変異型ロドプシン遺伝子トランスジェニック(Tg)家兎を用い同様に対光反射、網膜電図(ERG)、組織標本を観察した。Tg家兎では週齢と共に対光反射は減弱し、個体差もあるが50週近くになると赤色光刺激では対光反射はほぼ消失した。一方、青色光刺激の縮瞳率は約15%と僅かながらゆっくりとした縮瞳が残存した。ERGは振幅がほぼ消失した。同時点で組織学的に視細胞は完全に萎縮したものの、多角大型の網膜神経節細胞の一部は残存した。 昨年度までの結果をさらに確認し、対光反射の起源解明を確実なものとするため、25年度は組織学的変化が初期(軽度)であるTg家兎30週齢前で対光反射測定、組織検査を行った。ERGのa波はWTの約5割へ減弱、さらに対光反射も赤色光刺激による反応はWTの約5割へ減弱、しかし青色光刺激では依然として縮瞳率は50%とほぼWTと同値が残存した。この時点での網膜組織所見は視細胞中に核濃縮(pyknosis)が観察された。すなわち視細胞へ初期変化が生じる時期にはすでに視細胞由来である赤色光刺激の縮瞳は減弱していた。 以上、3年間の『赤色・青色光刺激による家兎対光反射とメラノプシンの関与』に関する生理学的、組織学的実験の結果をまとめると、家兎の視細胞は約95%が杆体で、5%の錐体が存在し対光反射を形成している。また網膜神経節細胞(RGC)には少なくとも3種類(小型円形、大型円形、超大型多角)が存在し、その大きさ、樹状突起の豊富さから超大型多角のRGCはメラノプシン含有RGCと考えられた。対光反射は視細胞が変性、さらに消失後も青色光刺激による反応は残存し、対光反射の起源の一部はmRGC由来であると結論した。
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