研究課題/領域番号 |
23592590
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小川 葉子 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (30160774)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 眼病理学 / 移植片対宿主病 / ドライアイ / 線維化 / 線維芽細胞 |
研究概要 |
眼移植片対宿主病(GVHD)は眼粘膜線維化を主体とした難治疾患であり、発症機構と病態形成の解明、新規治療法の開発が医学的にも社会的にも急務である。申請者は眼GVHDの線維化にドナー骨髄間葉系幹細胞(MSC)由来の線維芽細胞が主要な役割を担う可能性を見出した。ドナーMSCの眼GVHDの病態への関与についてマウスGVHDモデルを用い、次の2点を研究目的とした。1)GVHDにおけるドナー間葉系幹細胞(MSC)由来線維芽細胞の局在の解明、2)ドナーMSC由来線維芽細胞による眼GVHDの発症機構と病態形成にかかわる役割の検討について研究を推進した。a)全骨髄細胞移植(ドナーB10.D2マウスオス,レシピエントBalb/Cメス)を標準の移植とする。(Zhang Y, et al. J Immunol, 2002) これまでにGVHDに酷似した経時的線維化形成の作成をGVHD標的臓器で確立した。b)次にドナーMSCのみをB10.D2マウスオスから分離し、他の移殖造血細胞をレシピエント由来BALB/cメスから分離し, 各細胞を同時にBalb/Cレシピエントメスに移植し移植後の線維化形成過程、ドナー線維芽細胞の局在を涙腺、結膜を用いて調べ、浸潤数を全骨随細胞移植およびコントロールと比較した。GVHD各臓器で増加している線維芽細胞がドナーMSC由来かについて、マウス線維芽細胞のマーカーとしてHSP47を選択し、Fluorescein in situ hybridization (FISH)法と組み合わせて、メスGVHD組織におけるオス由来Y 染色体遺伝子の発現を検出した。c)さらに、B10.D2 GFPマウスを使用し同様にドナー由来GFP陽性線維芽細胞を検出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ドナーマウスについて手元にてバッククロスにより作成したB10.D2 GFPマウスを作成し理論上99.9%の遺伝子置換率となる10代目B10D2 GFPマウスが完成し、現在このマウスを維持しており移植実験に使用可能となった。ドナー由来細胞の追跡がFISH法より容易をなり、結果を得やすくなったことが挙げられる。GVHD作成に確立されたGVHDモデルを使用したためFISH法およびGFPドナーマウスにて眼表面、涙腺の解析において共通した結果と、安定した結果が得られた。さらにこれまで解析してきたヒト涙腺、結膜GVHDとマウスモデルではきわめて類似した結果が得られ、本モデルを解析する有用性が確かめられた。
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今後の研究の推進方策 |
間葉系幹細胞 (MSC)による眼GVHD免疫応答および線維化形成における分子機構の解明a)マウスモデルにおいて末梢血のIL-6、抑制性T細胞、Th-17T細胞数の推移を移植前よりprospecitve に検討。各分子のMSC数との関連性を確認。b)線維化に関わるTGF-β, IL-6, 抑制性T細胞とおよびそれに関わるTh17T細胞についてドナーMSC移植後に各分子の経時的な変化と線維化及びドナーMSC由来線維芽細胞数との関連を検討する。ドナーMSCが眼GVHD発症機転に関与するかを検証する。予備実験でドナーMSC移植3週後にGVHD様変化を示すレシピエントの血中IL-6がレシピエントタイプのMSCを移植したコントロールに比して有意な上昇を示し脾臓細胞の抑制性T細胞はコントロールに比し移植後3週時に減少を示しているためNを増やして再現性を確認する。。c)マウス各種MSC移植後のレシピエントのT細胞とB10,D2およびBalb/Cの新鮮MSCを共培養しBrdU ELISA (Roche社)を用いてT細胞の増殖能を、培養上清についてはELISA (BD bioscience) にてTGF-β、IL-6、IL-17、IL-23について培養上清のサイトカインの変動を、また組織における局在の検討をコントロールと比較検討する。d)診断のために得られたヒト涙腺、結膜組織切片についても同様の分子と各種T細胞の検証をする。
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次年度の研究費の使用計画 |
間葉系幹細胞(MSC)除去移植による線維化抑制の確認について以下のように計画している。a)MSC除去移植について線維化抑制の機序と安全性を検証する、MSC除去移植を施行後、涙腺および結膜ならびにGVHD各臓器での線維化抑制を確認する。Nを増やして繰り返し確認検証する。b) MSC除去移植後の、IL-6、IL-17, TGF-βについてのサイトカインの変動と抑制性T細胞数の推移を全骨髄細胞移植と比較検討する。さらに申請者らは新鮮MSCの中にHLA-DR陽性分画と陰性分画があることを見出しており、HLA-DR陽性分画のみを除くことにより、より免疫源性の高いMSCの存在の有無を確認する予定である。有用で安全性の高いMSC除去移植の可能性を追究する。臨床応用の可能性を検討する。c)臨床的には全骨髄細胞からヒト間葉系幹細胞(Mabuchi Y, Matsuzaki Y. Inflam and Regene 2008)除去移植の適応決定の準備をする。倫理委員会と登録臨床研究の準備を進める。申請者は基礎と臨床における他科との横断的連携が確立しており、基礎で得られた研究成果を臨床応用への早期実現が可能な環境にある。内科、眼科とは15年間連携し約600例以上の追跡dataを蓄積している。申請者はKEIO BMT programとして同一チームで造血幹細胞移植患者の眼科領域診察、治療を担当している。臨床応用への準備を進める。
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