研究課題/領域番号 |
23592596
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
吉田 浩二 近畿大学, 医学部, 准教授 (60230736)
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研究分担者 |
杉岡 孝二 近畿大学, 医学部, 講師 (50399119)
萩原 智 近畿大学, 医学部, 講師 (40460852)
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キーワード | 線維芽細胞 / 線維化 / タンパク質 / α2-antiplasmin |
研究概要 |
インテグリンα11(ITGA11)は線維芽細胞上のコラーゲンレセプターであり、線維化に関与すると推測されるが、その機能についてはよくわかっていない。昨年度までに、ITGA11の細胞内ドメインと相互作用するタンパク質としてcalcium and integrin binding protein 1(CIB1)を同定していた。当該年度においてITGA11とCIB1を恒常的に発現する安定発現細胞を確立した。 臓器の線維化は、コラーゲンをはじめとする細胞外マトリックス(ECM)が過剰に沈着し、臓器の機能障害をきたす病態である。plasminはfibrinを分解して血栓溶解作用を示すが、それ以外にECMを構成するフィブロネクチンやプロテオグリカンを分解する機能をもつ。その活性はセリンプロテアーゼインヒビター(セルピン)のひとつであるα2-antiplasmin(AP)によって抑制される。APが組織線維化にどのように関与するのかを明らかにするために、APと相互作用するタンパク質を探索した。 APをbaitタンパク質として、肺線維芽細胞cDNA libraryに対して酵母two-hybrid法によるスクリーニングを行った。その結果、マトリックスメタロプロテイナーゼ2 (MMP-2) がpreyタンパク質の候補として同定された。APとMMP-2の結合は免疫沈降法によって確認された。2種類のセルピン(APおよびα1-proteinase inhibitor (PI))に対するMMP-2の作用を検討したところ、MMP-2はAPをランダムに切断しPIを限定分解した。 また、bleomycin処理して生じたマウス肺線維化組織ではmyofibroblastによるAPの発現が亢進していた。 以上の結果から、MMP-2はAPを分解することにより組織線維化抑制に関与する可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度研究実施計画において予定していた通り、ITGA11およびITGA11の細胞内ドメインと相互作用するタンパク質であるCIB1を恒常的に発現する安定発現細胞の確立には成功した。同じく計画通りに、線維化にかかわるタンパク質であるα2-antiplasminをbaitとして酵母two-hybrid法を行い、マトリックスメタロプロテイナーゼ2 (MMP-2) をpreyタンパク質の候補として同定した。さらに、bleomycin処理して生じたマウス肺線維化組織ではmyofibroblastによるAPの発現が亢進することを見出した。しかし、それらのタンパク質を高発現させた場合、線維化に及ぼす影響についての十分な検討はできていない。
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今後の研究の推進方策 |
線維化にかかわる可能性のある各種タンパク質を恒常的に発現する安定発現細胞が確立できたので、それらの高発現するようになったタンパク質によって細胞が形態学的および生化学的にどのような影響を受けるかを解析する。具体的には、線維芽細胞の活性化の指標であるα-smooth muscle actin、細胞外マトリックスのひとつであるフィブロネクチンなどの発現、TGF-βシグナリングを担う細胞内タンパク質のひとつであるSmad3のリン酸化状態などを検討する。 また、α2-antiplasminと相互作用するタンパク質の探索も引き続き進めてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が7,101円生じた。これは当該年度の直接経費1,206,285円の約0.6%に相当する金額である。平成25年2月末の時点では、すでに当該年度に予定していた物品は購入済みであり、この金額(7,101円)で購入可能で、かつ早急に必要な物品はなかった。交付される科学研究費をできる限り有効に活用するためには、翌年度に繰り越し翌年度分の研究費と合わせて使用するのが妥当であると考えた。 当該年度と同じように、翌年度も直接経費は実験試薬・消耗品をはじめとする物品の購入に充てる予定である。
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