研究課題
眼創傷治癒におけるTGF-βとインテグリンの相互作用について解析するための基礎的研究を行った。線維化組織は筋線維芽細胞の過剰な存在によって特徴づけられる。これまでの研究からインテグリンを介する細胞外マトリックスと細胞骨格の相互作用が筋線維芽細胞の分化を促進することが明らかにされつつある。インテグリンα11(ITGA11)は線維芽細胞上のコラーゲンレセプターであり、創傷治癒・線維化に関わっていると推測されるが、その機能については不明な点が多い。線維化を促進する中心的役割を担うTGF-βで角膜線維芽細胞を刺激すると筋線維芽細胞様に形態が変化し、α-smooth muscle actin、fibronectin、ITGA11の発現が亢進することを見出した。ITGA11と結合する候補タンパク質として calcium and integrin binding protein 1 (CIB1)が同定されたので、ITGA11およびCIB1の線維芽細胞への影響を明らかにするために、ITGA11およびCIB1発現ベクターを構築し、線維芽細胞へトランスフェクションし安定発現細胞を確立した。それらの安定発現細胞はTGF-βに対する感受性が亢進した。これらのことから、ITGA11およびCIB1は臓器線維化治療の標的タンパク質となりうることが示唆された。また、本研究の過程で肺癌細胞株A549とPC9の培養上清が肺線維芽細胞MRC-5の活性化を抑制することを見出し、その抑制する物質は5'-deoxy-5'-methylthioadenosine (MTA)であることを同定した。MTAはTGF-βが誘導するmitogen-activated protein kinaseの活性化を抑制することにより筋線維芽細胞活性化を抑制した。また、緑茶成分epigallocatechin-3-gallate (EGCG)はTGF-β type IIレセプターに結合し、TGF-βの作用を阻害することが判明した。これらの結果から、MTAとEGCGは線維化抑制に応用できる可能性があると推察される。
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