研究概要 |
未熟児網膜症は小児失明原因の第二位(柿澤敏文ら:心身障害研究, 26, 163-175, 2002)を占める重要な疾患である。未熟児網膜症は、低出生体重児に伴う網膜血管発達の未熟性とそれに基づく虚血が根底にあり、そこに酸素投与等の要因が加わることで網膜新生血管が発生、重症例では牽引性網膜剥離を来たして失明に至ることが知られているが、その病態や発症に関する詳細なメカニズムについては、十分に解明されたとは言い難い。 本研究では重症未熟児網膜症11例に対して抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)治療(アバスチン投与)を行った症例について、投与翌日、1週後、2週後に血清を採取、血清中のアバスチン濃度、VEGF濃度を測定した。その結果、アバスチン投与後に血清アバスチン濃度は経時的に上昇し、逆に血清VEGF濃度は経時的に減少し、両者は負の相関を示した。これらの結果から眼内に投与したアバスチンは血清中に移行し、血清中のVEGF濃度を低下させる可能性があることが示された。今後、抗VEGF治療を考える上で、薬剤選択の際の判断材料になるものと思われる。
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