研究課題
本研究では、涙液試料から液体クロマトグラフィ(HPLC)を用いて涙液成分解析を行い、疾患マーカーや治療の標的分子を同定することで、ドライアイの病態解析を行った。本年度はソフトコンタクトレンズ(SCL) 装用者のドライアイに対する2種類の治療薬、レバミピド(MC) とジクアホソル(DQS)の効果を臨床所見、膜型ムチンの蛍光強度、涙液中の蛋白・分泌型ムチンの分析から検討した。MC点眼ではSCL装用者16例を対象とし、2週間の試験期間で評価を行った。膜型ムチンの指標としてフルオレセイン標識レクチン (F-WGA)点眼後の角膜蛍光強度を用いた。シルマー試験紙で採取した涙液試料から涙液蛋白と分泌型ムチンの指標であるシアル酸をHPLCで測定した。MCの点眼前後で臨床所見の有意な変化はなかったが、F-WGAの有意な増加がみられた。涙液蛋白ではsIgAが有意に増加し、シアル酸にも増加傾向がみられたが、他は有意な変化を示さなかった。DQS点眼ではSCL装用者12例を対象とし、4週間の試験期間で評価を行った。DQS 点眼前後の臨床所見では涙液層破壊時間(BUT)と角結膜染色スコアが有意に改善したが、シルマー値に変化はなかった。F-WGAには有意な増加がみられたが、涙液分析ではシアル酸、涙液蛋白などに有意な変化はみられなかった。ドライアイ治療薬であるMCやDQSの点眼後にはF-WGAの有意な増加がみられ、SCL装用者に対するドライアイ治療薬の点眼は、膜型ムチンを増加することで治療上有用である可能性が示された。また涙液減少型ドライアイでは涙液中のシアル酸濃度の低下が見られたが、SCL装用者では低下を認めなかった。サブタイプの病態の違いを示す涙液マーカーとしてシアル酸が良い指標となる可能性があると考えられた。
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