研究課題/領域番号 |
23592603
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
近藤 峰生 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80303642)
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研究分担者 |
寺崎 浩子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40207478)
加地 秀 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30345904)
米今 敬一 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40362256)
上野 真治 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80528670)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 網膜色素変性 / 動物モデル / 網膜電図 / ウサギ / ロドプシン |
研究概要 |
視細胞変性疾患おける錐体機能を他覚的に研究するには、錐体ERGのa波を解析することが必要になる。これまでに、サルを用いた実験において、錐体ERGのa波の中には錐体視細胞以外にOFF型双極細胞由来の成分が含まれていると報告されてきた。しかしながら、これらの結果は全て正常なサルにおける結果であり、視細胞が徐々に変性していくジストロフィーの網膜において錐体ERGのa波中にどの程度錐体視細胞の関与があるのかは知られていない。これは、網膜変性疾患をERGを用いて解析する際に重要な問題である。そこで今回我々は、ロドプシンP347Lトランスジェニック(Tg)ウサギにシナプス遮断薬を作用させて、視細胞変性モデルの網膜における錐体ERGのa波の起源を研究した。その結果、錐体ERGのa波に占める視細胞成分の割合は、生後4か月の野生型では50-70%あるのに対し、Tgウサギでは30-50%しかなかった。これまでの結果により、Tgではa波に含まれる視細胞以降の成分の割合が高くなっていることがわかったが、この理由として、(1) 錐体視細胞が変性しているにもかかわらず網膜内層の細胞は保たれている、(2) 視細胞の変性に伴って視細胞以降の成分に2次的変化が生じて視細胞以降の成分の電気反応が増大した、の2つの理由が考えられた。このうち2つめの可能性がないかを検討する目的で、視細胞以降の成分の振幅の絶対値をプロットした。その結果、特に弱い光刺激に対しては、WTよりもTgの方が視細胞以降の成分の振幅が大きくなっていることがわかった。以上の結果により、(1)と(2)の両方の理由により、Tgウサギの錐体ERGのa波では視細胞以降の成分の割合が増えていることがわかった。今回の結果から網膜ジストロフィーの錐体ERGa波の解釈には十分な注意が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の目的としていた、錐体ERGのa波の起源について研究して新知見を得て、その成果をInvestigative Ophthalmology & Visual Science誌に報告することができた(Hirota, Kondo et al. IOVS, 2012).
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、Tgウサギ6匹を用いて、変性網膜のフリッカーERGの起源を解析する。 フリッカーERGの記録には、赤色LED刺激を搭載したGanzfeldドームを用いる。杆体の活動を抑制する目的で30 cd/m2の白色背景光を持続点滅し、その上から赤色LEDによるサイン波で刺激する。サイン波の刺激はfunction generatorによって制御し、刺激の強度とフッリカーの速度を自由に変えることができるようにする。フリッカーERGの刺激頻度は2, 4, 8, 12, 16, 24, 32, 48, 64 Hzの9段階とし、ノイズの少ない波形が得られるまで合計10-20回の加算平均を行う。その後、まずON型双極細胞を遮断する目的で代謝型グルタミン酸受容体のagonistであるL-2 amino-4-phosphonobutyric acid (APB)を硝子体内に注入し、60-90分後に再び2-64 Hzの刺激頻度でフリッカーERGを記録する。さらに、その後にOFF型双極細胞を遮断する目的で、AMPA/KA型受容体のantagonistであるcis-2,3-piperidine- dicarboxylic acid (PDA)、あるいは6-cyano-7-nitroquinoxaline-2,3(1H,4H)-dione (CNQX)を硝子体内に注入する。APBと同様に薬物が十分に作用したと考えられる60-90分後に再び2-64 HzでフリッカーERGを記録する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験動物と試薬などの消耗品の購入で約500,000円程度を予定しており、海外旅費および国内旅費で約500,000円程度を予定している。
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