研究課題/領域番号 |
23592607
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
白石 敦 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90314963)
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研究分担者 |
小林 剛 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄付講座助教 (70380285)
白方 裕司 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (50226320)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 角膜上皮 / 幹細胞マーカー / 形質転換 |
研究概要 |
本研究においては、すでにマウス角膜上皮細胞を培養することに成功し、Keratin12プロモーターによりGFPの発現するK12-Cre-ZEGマウスを用いて皮膚上皮から角膜上皮細胞への形質転換モデルを確立している。本年度では免疫組織学的に形質転換モデルを検討した。結果として、角膜周辺から中央部にかけて上皮様細胞層を認め、これらの細胞はサイトケラチン(AE12/AE3)陽性であった。また、表皮特異的ケラチンK10と角膜上皮特異的ケラチンK12の免疫染色結果では、角膜中央部ではK10の発現を認めたがK12の発言は認めず、角膜輪部ではK10,K12両方の発現が認められた。また、本年度にはマウス表皮Side population(sp)細胞の単離について検討を行った。マウス(P0)の表皮細胞をHoechst 33342で染色、FACSによりspを分取し、この細胞群はABCトランスポーター阻害剤の添加により消失した。FACSで得られたsp細胞の培養によりコロニーの形成が認められ、本法による表皮幹細胞の濃縮の準備が整った。K10陽細胞とK12陽性細胞はすでに分化した表皮、角膜特異的細胞であり、角膜上皮幹細胞マーカーは含まれない可能性が高く、角膜中央部のK12(-)K10(-)細胞は角膜上皮に形質転換しない細胞群であり、角膜輪部のK12(-)K10(-)細胞群の中に、皮膚上皮幹細胞から角膜上皮幹細胞に形質転換した細胞が含まれている可能性が高い。来年度にはsp細胞を用いた形質転換モデルにおいて、これらの4細胞群を単離し、遺伝子発現プロファイルの解析を行うことで角膜上皮幹細胞マーカーの有力な候補遺伝子の同定を試みる。本研究で得られた結果は我々の方法のみならず、iPS細胞などを用いた角膜上皮再生医療において多大な貢献ができると期待するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度にはマウス表皮Side population(sp)細胞の単離について検討を行った。マウス(P0)の表皮細胞をCnT-07(CELLnTEC)にてコンフルエントまで培養後トリプシン処置にて回収し、Hoechst 33342で染色、FACSによりspを分取した。この細胞群はABCトランスポーター阻害剤(ベラパミル)の添加により消失した。FACSで得られたsp細胞の培養によりコロニーの形成が認められ、本法による表皮幹細胞の濃縮の準備が整った。また、免疫組織学的に形質転換モデルを検討した。結果として、角膜周辺から中央部にかけて上皮様細胞層を認め、これらの細胞はサイトケラチン(AE12/AE3)陽性であった。また、表皮特異的ケラチンK10と角膜上皮特異的ケラチンK12の免疫染色結果では、角膜中央部ではK10の発現を認めたがK12の発言は認めず、角膜輪部ではK10,K12両方の発現が認められた。当初はK12 陽性細胞のみををマーカーに単離解析予定であったが、免疫染色の結果からK10陽細胞とK12陽性細胞はすでに分化した表皮、角膜特異的細胞であり、角膜上皮幹細胞マーカーは含まれない可能性が高く、角膜中央部のK12(-)K10(-)細胞は角膜上皮に形質転換しない細胞群であり、角膜輪部のK12(-)K10(-)細胞群の中に、皮膚上皮幹細胞から角膜上皮幹細胞に形質転換した細胞が含まれている可能性が高い。次年度に行う予定のsp細胞を用いた形質転換モデルから単離した4細胞群間遺伝子発現プロファイルの解析の準備が整い、計画は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
野生型(C57BL/6)マウスから角膜を摘出後、上皮を除去した角膜実質上にa)で準備したK12-Cre-ZEGマウス由来の表皮sp細胞を播種(1x105/cm2)し(器官培養)、角膜上皮様細胞への形質転換を試みる。培養は、申請者らが報告したマウス角膜上皮細胞の培養法に基づき、Ca++を添加した角膜上皮分化用培地CnT-30 (CELLnTEC)を用いて行う。角膜上皮細胞への形質転換の確認は、K12-Cre-ZEGマウス由来の細胞はK12の発現に伴い発現するGFPにて判別する。上記皮膚上皮sp細胞―角膜上皮形質転換モデルにおける角膜輪部上の細胞からK12(-)細胞K12(+)細胞をGFPの発現によりさらに、K10抗体を用いてそれぞれをK10(-)再細胞、K10 (+)細胞にcell sorter (Beckman Coulter)を用いて4群に分別して回収する。本年度では分別した4群間において、DNAアレー(Filgen社、CodeLink Bioarrays)を用いて遺伝子プロファイルを比較検討する。角膜上皮spおよびK12(-)K10(-)細胞において発現し、他の細胞群では発現していない遺伝子は角膜上皮幹細胞マーカーの候補となる可能性があることより候補遺伝子を選別する。選別された遺伝子発現細胞がK12発現細胞に誘導されたならば、その遺伝子は角膜上皮幹細胞マーカー候補となる。そこで、その(それぞれの)遺伝子の発現を抗体を用いて正常マウス角膜上皮内での局在を免疫組織染色法にて確認する。そのとき、角膜輪部基底細胞付近に陽性である遺伝子はより角膜上皮幹細胞マーカーの可能性が高く、複数候補遺伝子が得られた場合には多重染色を行い、多重染色される細胞を確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、マウス細胞培養、免疫染色、DNAアレーなどの試薬に使用する予定であり、購入する物品はない。
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