研究概要 |
我々は、すでに野生型(C57BL/6)マウスから角膜を摘出後、上皮を除去した角膜実質上にKeratin12プロモーターによりGFPの発現するK12-Cre-ZEGマウス由来の表皮細胞を播種し、GFPの発現を指標にした角膜上皮様細胞への形質転換形質転換モデルを確立している。本研究では1)免疫組織学的に形質転換モデルを検討した。結果として、角膜周辺から中央部にかけて上皮様細胞層を認め、これらの細胞はサイトケラチン(AE12/AE3)陽性であった。また、表皮特異的ケラチンK10と角膜上皮特異的ケラチンK12の免疫染色結果では、角膜中央部ではK10の発現を認めたがK12の発言は認めず、角膜輪部ではK10,K12両方の発現が認められた。2)マウス表皮Side population(sp)細胞の単離について検討を行った。マウス(P0)の表皮細胞をコンフルエントまで培養後トリプシン処置にて回収し、Hoechst 33342で染色、FACSによりsp細胞を分取した。また、この細胞群はABCトランスポーター阻害剤の添加により消失した。FACSで得られたsp細胞の培養によりコロニーの形成が認められ、本法による表皮幹細胞の濃縮の整備を行った。3)K12Cre/ZEGマウスより表皮sp細胞を単離し、角膜輪部実質由来線維芽細胞との共培養にて角膜上皮様細胞への形質転換を試みた。結果、表皮sp細胞と輪部線維芽細胞の共培養においてGFP陽性細胞が認められ、RT-PCRによりK12遺伝子の発現が確かめられた。4)マウス角膜中心部実質と輪部実質由来の線維芽細胞に対してトランスクリプトーム解析を行った。その結果、輪部実質由来の線維芽細胞において、Sfrp2を始めとする複数のWntシグナル関連因子mRNAの高発現が認められることが分かった。Wntシグナルは、種々の遺伝子発現を調節することが知られるシグナル伝達経路であり、輪部における上皮細胞の分化制御に関与している可能性がある。今後これらの因子が上皮細胞分化に与える影響についても検討を行いたいと考えている。
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