研究課題/領域番号 |
23592610
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
福島 美紀子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (10284770)
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研究分担者 |
伊藤 康裕 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (70380996)
井上 俊洋 熊本大学, 医学部附属病院, 講師 (00317025)
行徳 雄二 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10420639)
高橋 枝里 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60622602)
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キーワード | 眼科学 / 眼発生・再生医学 / 眼細胞生物学 |
研究概要 |
・網膜幹細胞の単離、同定:FACSで二次元展開して得られるside population(SP)細胞をマウス胎仔網膜、成体毛様体より獲得した。マウス胎生16日網膜ではSP細胞が同定され、これらを浮遊培養したところ、ニューロスフェア様の細胞集団塊が得られた。これら一次スフェア細胞を分離し、二次スフェアの形成を観察したが、スフェアの形成は認められなかった。一次スフェア細胞を培養皿で培養し、分化させたところ、視細胞マーカーであるロドプシン陽性細胞が認められた。成体毛様体ではスフェアアッセイにより一次、二次スフェアを得ることができ、網膜特異的ニューロンへの分化が確認された。 ・網膜幹細胞分化に関わる分子の探索 (1) 疾患モデル動物に関与する分子群の解析:angiopoietin-related proteins (ARPs)のひとつ、ARP4の発現上昇によりが網膜血管発生、病的血管新生において血管内皮細胞の増殖を抑制し、血管壁の病的な漏出も改善されることが明らかになった。糖尿病網膜症の眼内臨床サンプルにおいてもARP4の発現が認められた。また炎症性サイトカインであり、神経幹細胞、網膜分化に影響が知られているIL-6が眼疾患モデル動物、さらに白内障術後の眼内で発現が上昇していることが明らかになった。 (2)眼内増殖に関与する分子メカニズムの解析:網膜幹細胞の細胞源の候補である網膜色素上細胞の分化転換メカニズムについてARPE-19培養上清に眼内臨床サンプルを添加し、増殖、分化を観察した。 (3)神経細胞の生存・維持に影響する分子の解析:神経細胞の生存に関わる神経栄養因子の軸索輸送に関して、生体内での輸送を可視化できるモデル動物を作成し、その障害のメカニズムを解析する実験系を確立させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患において発現上昇する分子の探索に関しては疾患モデル動物と疾患サンプルの解析により計画通り進展している。網膜幹細胞は神経幹細胞と比較して、増殖能が低く、現在のFACSを用いた方法では単離される細胞の量が限られていたが、パンニング法による細胞単離法が可能になった。また昨年度新たに眼内増殖に関わる網膜色素上皮細胞の観察評価が可能になったことで、新たな実験系が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
網膜幹細胞の単離効率を挙げるため、パンニング法に用いる特異抗原分子の探索を行なう。新たな単離法を確立させる予定である。疾患モデル解析をすすめ新たな分子機構を明らかにし、網膜幹細胞への影響をみる。網膜移植において分化増殖に関わる眼内因子の影響を明らかにするため、前年度に引き続き、疾患において炎症系サイトカインを中心に発現上昇する分子の探索を行なう。すでに術後に長期に上昇することが明らかになったIL-6について、幹細胞移植後の発現ならびに移植後IL-6を添加した際の分化増殖を観察し、影響を検討する。網膜移植に細胞源、宿主側両方に重要な役割を担う網膜色素上皮の分化転換について影響を与える分子の探索を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、臨床サンプルの解析をin vitroで行なう。幹細胞の増殖分化に影響を与えることが確認できた分子についてはその制御機構の解析を進める。モデル動物を用いた幹細胞移植によりin vivoの評価を加え、より臨床応用に近い形で結果を示す予定である。
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