研究課題/領域番号 |
23592611
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 典彦 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80264654)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医療 / 動物実験代替法 / 眼刺激性試験 / 角膜毒性 / 角膜上皮細胞毒性 |
研究概要 |
<背景と目的>点眼薬の開発や臨床応用では角膜上皮への影響が問題となる。その評価には in vitroで単層培養された細胞が用いられてきた。今回、より生体に近い重層化した培養角膜上皮シートを用いた障害修復の実験系を作成し、塩酸モキシフロキサシン点眼液(MFLX)とレボフロキサシン点眼液(LFLX)の角膜上皮障害に対する影響を検討した。<方法>角膜上皮細胞は白色ウサギの角膜組織片から取得し、air-lift培養で重層化を行った。上皮の欠損は水酸化ナトリウム水溶液を浸透させたスポンジの接触で作製した。スポンジの除去後、MFLXとLFLX点眼液を1日3回滴下して1分後に洗浄、air-lift培養を継続し、欠損部の被覆率を面積で評価した。MFLXとLFLX点眼液は原液と4倍希釈液を、陰性コントロールには培養液を、陽性コントロールには塩化ベンザルコニウム0.01%溶液を用いた。<結果>陰性コントロールでは4日後に上皮細胞による欠損部の完全な被覆がみられた。陽性コントロールでは被覆が抑制された。一方、MFLXとLFLXはいずれの濃度でも欠損部は被覆され、陰性コントロールと有意差はなかった。<考察>生体に近い、重層化された培養角膜上皮シートを用いた今回の実験系で、MFLXとLFLX滴下群ではコントロールと同様に欠損部が被覆された。MLFXとLFLXはいずれも角膜上皮障害の修復を阻害する点眼薬ではないと考えられた。<成果の報告>これらの結果は申請者がcorresponding authorとして投稿しGraefes Arch Clin Exp Ophthalmol (in press, DOI 10.1007/s00417-011-1916-1)に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、申請者は自身が開発した方法を用いて医薬品と香粧品の眼刺激性を明らかにすること、さらにより簡便で再現性の高い方法への改良を目指した。医薬品では角膜上皮細胞の単層培養系で強い角膜上皮毒性が指摘されているフルオロキノロン系抗菌薬の毒性を検証した。申請者が開発した生体に近い、重層化された培養角膜上皮シートを用いた方法で、MLFXとLFLXはいずれも角膜上皮障害の修復を阻害する点眼薬ではないことが明らかにされた。これの結果は申請者がcorresponding authorとして投稿しGraefes Arch Clin Exp Ophthalmol (in press, DOI 10.1007/s00417-011-1916-1)に年度内に受理された。香粧品では炭素鎖長は同じで不飽和のオレフィン2重結合の位置が異なる物質間での障害性の相違検出を目指した。より遠位に2重結合を有するもの2種、より近位に有するもの3種の計5種すべての入手を試みているが合成が困難なものがあり、手法の改善を検討している。簡便性、再現性の向上を行うためコラーゲンゲルのシート化を行っている。シート化する際の条件の違いで同じコラーゲンゲルを材料としても異なる基質としての特性が見られることが判明した。中和法、乾燥法をさらに改善し当初の目的を実現するべく検討を続けている。
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今後の研究の推進方策 |
これまではブタ羊膜を用いていたが、シート化した基質性能を検証し今後の試験に供してゆく。医薬品では角膜上皮への毒性が疑われている緑内障点眼薬の毒性を検出し、その構造と機能の相関を検討する。香粧品では当初検討を予定したものの合成に難儀している。新しい合成を試みる一方で、眼刺激性を有する異なる化合物を探索する。医薬品、香粧品の毒性を検出して行く過程でより簡便で再現性の高い方法を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養角膜上皮細胞を用いた実験に必要な試薬および使い捨て器具の購入に物品費を使用する。得られた成果の国内および国外での報告に旅費を使用する。論文投稿にその他の経費を使用する。
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