研究概要 |
最終年度、本研究の主目的である眼刺激性試験は確立された。さらに、その過程で考案された次世代の試験方法の概念が実現可能であることが証明された。 本年度は実際の香粧品に使用される界面活性剤であるラウリル硫酸ナトリウムの眼刺激性の検出をおこなった。培養角膜上皮細胞シートは従来のウサギ角膜ではなく豚角膜から作成した。トランズウエルの1ウエルには6枚の培養角膜上皮細胞シートから切り出された試験ディスクを設置した。各試験ディスクを被験物質の10-1から10-4溶液で暴露した。72時間の観察後、試験ディスク断端から伸展した細胞の面積を計測したところ10-1溶液で有意な細胞伸展の抑制が観察された。この結果は生きたウサギを使用するドレイズ試験と同等の結果であった。以上の結果から当初の目的であった培養角膜上皮細胞シートを用いた眼刺激性試験の確立に成功した。この度確立された試験方法は産業動物の廃棄部位を使用するため完全な動物実験代替法である。1枚のシートから複数の試験ディスクを作成することでシート作成の労力を軽減すると同時に同時多検体の試験が可能となりシート間の感受性のばらつきに影響を受けない試験が可能となった。 当初の目的は達成されたがいまだ多くの時間と労力を要する。本試験方法確立の過程でより少ない細胞数、より短い時間で実施可能な方法の発案に至った。原子間力顕微鏡は細胞の形、表面形状等の形態学的変化に加えて細胞表面の硬さ等の物理学的性状変化をリアルタイムに検出する。本装置を用いて塩化ベンザルコニウムに暴露した培養角膜上皮細胞を観察したところ、約2時間の測定で形態の変化に加えて表面の硬さの変化を検出することに成功した。細胞は100,000個から1個、そして検出が3日間から2時間になる可能性が示唆された。この新しい方法にさらなる改良を重ねより良い試験方法へと発展させてゆく。
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