研究課題
申請者らは、網膜神経節細胞死に小胞体ストレス負荷を介した機序が関与しているという仮説に基づき研究を進め、その網膜障害時に小胞体ストレスが誘導されることを初めて明らかにした。さらに、in vitroスクリーニングにより小胞体ストレス細胞死を抑制する新規化合物を見出し、それらの中で保護作用の最も強力であった化合物の作用機序の解析から、その保護作用が神経栄養因子により誘導される神経分泌タンパク質であるVGF nerve growth factor inducible (VGF)遺伝子の発現を介していることを明らかにした。本研究ではこれまでの研究成果を発展させ、神経細胞障害におけるVGFの関与およびその機序を解明すること、さらにVGFの新規治療ターゲットとしての可能性を網膜障害モデルを用いて検討した。VGF活性ペプチドであるVGF588-617 (AQEE30)は糖鎖修飾阻害剤であるツニカマイシンにより誘発した小胞体ストレスによる神経細胞障害に対して保護作用を示し、細胞生存促進因子であるAkt (v-Akt Murine Thymoma Viral Oncogene)/PKB (Protein Kinase-B)のリン酸化亢進作用を示した。これらのことから、VGFは細胞生存シグナルを活性化することにより神経細胞保護作用を発現していることが示唆された。さらに、VGFはマウス網膜全層に発現しており、自然発症緑内障モデルマスウの網膜および視神経において小胞体ストレスにより発現する細胞死誘導性転写因子C/EBP homology protein (CHOP)の発現およびVGFの発現が増加していることを明らかにした。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Exp Eye Res
巻: 111 ページ: 1-8