研究課題/領域番号 |
23592614
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
稲富 勉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00305583)
|
研究分担者 |
川崎 諭 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60347458)
丸山 和一 東北大学, 大学病院, 講師 (10433244)
|
キーワード | 再生医療 / 角膜上皮 / 口腔粘膜上皮 / 細胞分化 / 新生血管 |
研究概要 |
1)培養口腔粘膜上皮移植後の長期眼表面生着と臨床的評価:培養口腔粘膜上皮移植による眼表面再建の臨床効果について検討することができた。急性期症例、角膜再建および結膜再建について有効性を各種臨床パラメーターを用いて評価できた。共焦点レーザー顕微鏡により眼表面での長期生着とその組織構築を明らかにできた。臨床的な有害事象や合併症の頻度につぃて検討し、自己組織移植により従来のアロ移植に比較し感染症、遷延性上皮障害などを低く抑制することができた。 2)眼表面上生着上皮の生物学的特性:培養口腔粘膜上皮の角膜上皮および結膜上皮との生物学的特性の差異を明確にしてきた。細胞増殖活性に関与するp75発現パターンやクローナルアッセイによる増殖活性評価により培養上皮シートには高い増殖能を有していることを証明した。また分化因子であるケラチン発現パターン、MUC16などの糖タンパク発現パターンについて解析角膜上皮とはことなる表現型を維持していることを示した。 3)再建眼表面組織の検討:再建後上皮ではフルオレセイン染色性、上皮重層化構造が異なる。特に涙液減少環境では容易にmetaplasiaを生じ、上皮重層化と血管新生が誘発される。この現象は可逆的であり輪部支持型コンタクトレンズ装用などにより軽減され、移植後の術後管理としては重要な利点となった。また神経再生が生じない状態でも高い増殖能が維持されている。 4)新生血管誘導と制御:口腔粘膜上皮ではTSP1などの血管新生抑制因子の発現がないため移植後早期から血管新生およびリンパ管新生が生じる。この現象は抗VEGF点眼により抑制することができ、炎症期における血管新生を同薬剤にて臨床的にも抑制可能であった。しかし抗VEGF薬剤には口腔粘膜上皮に対する増殖抑制作用があることが示され、バランスのとれた使用が必須であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
培養口腔粘膜や粘膜上皮における増殖能検討や血管新生に関与する因子についての研究については成果をあげている。臨床効果の評価に関しても、視力改善、結膜瘢痕抑制、結膜侵入抑制について長期効果が評価できている。In vivoでの生物学的な手法を用いた長期生着の証明や形態評価をインプレッションサイトロジーなどを用いて計画する。さらに表層上皮の特徴についても、他の粘膜上皮比較を行いながら推進する。
|
今後の研究の推進方策 |
口腔粘膜および培養口腔粘膜上皮の細胞特性と眼表面上での生着形態の解析検討をすすめる。特に分化後の最表層上皮の特徴については粘膜関連因子の発現の有無やバリアー機能への役割を検討する。口腔粘膜に加え、杯細胞分化能をもつ鼻腔粘膜との比較も行う。ムコイド構成因子であるMUC16, galactin-3, MUC5ACなどの発現誘導や結合を検討し、ムコイドユニットとしての特徴を解析する。また長期生着状態の再評価と組織再構築をin vivo共焦点顕微鏡により観察し、臨床効果を検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究は次年度が最終年度となるため、研究のまとめおよび発表等に関して研究費を使用する。形態学的な解析や培養機器、分子生物学的な実験に必要となる備品はすでに設置されているため特別な支出は予定していない。細胞もしくは組織特性の解析を免疫学的手法と遺伝子発現解析のために、各種抗体の購入、各種酵素や薬品の購入経費、培養上皮シート作成と培養方法に関連する消耗品の購入を予定する。米国眼研究学会(ARVO)、日本臨床眼科学会、日本眼科学会、角膜学会の国内外の学会参加を予定する。
|