研究課題
本研究は角膜上皮幹細胞疲弊症に対する再生医療としての自家口腔粘膜上皮シート移植の細胞特性について検討し、異所性に生着することでの細胞変化や再生される組織構築について解析を行った。自家口腔粘膜上皮移植は両眼性疾患に対する唯一の自家移植であり臨床的な治療効果が高いが、培養過程で可逆的に分化変動をきたすものの、生着状態ではオリジナルな特性を回復維持し粘膜バリアーを再生していることが判明した。1)遺伝子発現パターン解析において口腔粘膜上皮、培養上皮シート、角膜上皮の細胞特性をgene chipを用いて2200遺伝子について解析を行った。培養状態では角膜上皮と口腔粘膜上皮の中間的な遺伝子プロファイルに分化誘導されていることが解明できた。特に角膜特異的なMUC16遺伝子などの終末分化に関連する遺伝子は誘導されるが、K13,PAX6などの基礎遺伝子は誘導されず、完全な角膜上皮への分化誘導がなされないことが解明できた。2)口腔粘膜上皮には、progenitor cellとしてp75陽性細胞が散在するが、p75陽性細胞含有量が培養条件下での増殖能に反映されることが解明された。臨床予後とp75細胞含有率との関係を解明し、さらに培養方法の改良により含有率を向上・維持させる必要性が示唆された。3)眼表面に異所性に生着した口腔粘膜上皮では培養条件下で一旦誘導された分化遺伝子は消失し、角膜上皮と異なる口腔粘膜上皮固有の細胞特性を維持しつづけることが解明された。ドライアイ環境や炎症性サイトカイン・血管新生誘導因子により細胞分化が影響を受け、ドライアイ環境により組織重層化や表層上皮のmetaplasiaが誘導された。口腔粘膜上皮には血管抑制因子であるsFlt-1、TIMP-3、TSP-1などの発現誘導はみられず、輪部からの血管新生が誘導された。この現象は抗VEGF抗体投与により抑制が可能であった。
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