研究課題
難治性視神経炎である視神経脊髄炎(neuromyelitis optica;NMO)、特に抗アクアポリン4 (AQP4)抗体陽性視神経炎は著明な視力低下を生じ、再発を繰り返す視力予後不良な疾患である。本課題では難治性視神経炎の動物モデルとして知られる実験的自己免疫性視神経炎(experimental autoimmune optic neuritis: EAON)を用いて、近年、新たな免疫調節分子として注目されているレチノイン酸、またレチノイン酸受容体(retinoic acid receptor:RAR)の活性本体であるRAR-α/βの選択的アゴニストであるAm80を用いてレチノイドの炎症抑制効果と作用機序について検討を行った。その結果、1) EAON誘導期からレチノイン酸、およびAm80を投与した群では、対照群(基剤投与群)に比べて病理組織学的視神経炎スコアが有意に低下、2) 免疫後15日目に採取したリンパ節細胞の培養上精中のIFN-γ、IL-17はレチノイン酸投与群でともに有意に低下、3) EAON発症期からレチノイン酸の投与を開始した群では対照群と比較して病理組織スコアの有意差はなし、4)各群の視神経を採取し、myelin basic protein (MBP)に対する免疫組織染色を行ったところ、レチノイン酸およびAm80投与群に比較し対照群ではMBP残存スコアが有意に低下、5)マイクロアレイによる網羅的な遺伝子発現解析にてAm80投与マウスの視神経ではラジカルスカベンジャーの一種であるsuperoxide dismutase 1 (SOD1)の発現が対照群と比較して約5倍の上昇を認めた。以上の結果からレチノイン酸、Am80による実験的自己免疫性視神経炎に対する炎症抑制効果、視神経保護効果が確認された。
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