研究概要 |
従来のヒト角膜上皮細胞培養には、ヒトとは異種のマ ウス3T3線維芽細胞との共培養が必要であり、ウシ血清を用いることが必須であるなど、未知成 分による感染リスクおよび施設間で同一の細胞シートの作製が困難という点では問題の多い培 養法であった。我々は、採取の培養法がマウス 3T3 線維芽細胞との共培養を必要としない新しい培養ヒト角膜上皮細胞の無血清、 無フィーダー培養法を世界で始めて開発し報告した。しかし完全に 重層化した5-6層の角膜上皮層ではあったが、論文公表後に未分化細胞マーカーの発現を詳細に 検討したところ、本培養法による細胞シートは角膜輪部上皮に多く発現している角膜上皮の未分 化細胞の維持が十分でなく、移植後に安定して眼の上で増殖する未分化細胞を十分に維持する培 養法に改良する必要があるとの結論に至った。そこで今回の研究の目的は、この無血清、無フィ ーダー培養法を改良して未分化細胞が十分に維持される培養法へと改良を行うことであった。結果として我々は、多くの増殖因子のなかからHGF, KGF, TGFaなどがヒト角膜上皮細胞の培養の増殖能を有意に高めることを見いだした。しかし再生医療の材料として細胞を用いるためには、未分化能の維持がきわめて重要であることから、増殖能が維持されかつ未分化細胞マーカーが維持される培養法を決定するための検討を行った。結果としてKGFを単独であるいは混合で用いることが重要である可能性を見いだしたため、今後は動物実験による前臨床試験に向けて検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
鍵となる増殖因子は特定したが、他の因子とのカクテルで最適な条件が見いだせる可能性があるため、引き続き角膜上皮の分化マーカーとしてサイトケラチン3,12未分化マーカーとして、p63, p75NTR, Notch1,N-Cad, サイトケラチン 14,15、ABCG2などの角膜輪部上皮発現蛋白の解析を行い、各種未分化マーカーの発現レベルの検討を行う。さらにウサギ眼に対する移植実験を行い有効性の検討とする。
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