研究課題/領域番号 |
23592618
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山上 聡 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (10220245)
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キーワード | 角膜輪部上皮細胞 / 幹細胞 / KGF |
研究概要 |
培養ヒト角膜上皮細胞シート移植は、治療が禁忌とされた幹細胞疲弊症眼に対する眼表面再建を可能とする再生医療であるが、細胞シートの作製に異種のフィーダー細胞としてマウス3T3線維芽細胞との共培養やウシ血清を用いることが必須であった。これに対し、我々は無血清、無フィーダーによる新しい培養法を考案し報告したが、細胞の未分化性維持という点では未だ不十分であった。そこでこの新しい培養法を細胞の未分化性維持の可能な培養法に改良し、従来の未知成分による感染リスクおよび施設間で同一の細胞シートの作製が困難という問題点を解決することを目的とした研究を行った。 増殖因子は、以前報告したepidermal growth factor (EGR)以外に、ketatinocyte growth factor(KGF), hepatocyte growth factor (HGF), transforming growth factor (TGF) alpha添加群で検討した。これらの増殖因子で細胞の増殖能を検討したところおおきな差異は認められなかったが、組織学的な検討ではHGFで増殖させた細胞シートの重層化構造が不良であった。さらに未分化マーカー発現を検討し、輪部上皮の未分化マーカー発現と比較したところ増殖因子としてKGFを用いたものが明らかに輪部上皮に類似の発現パターンであったが、他の増殖因子では分化した角膜中央上皮に近い発現パターンを示した。これらのことから今後は無血清・無フィーダー培養の前臨床試験としてKGFを用いて培養した細胞シートの生体内での安定性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未分化細胞のスクリーニングが終了し、前臨床試験を残すのみとなったので、概ね順調に進行していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに決定した無血清・無フィーダー培養法で作製した培養ヒト角膜上皮細胞シートを用いた家兎モデルへの移植実験を実施する。具体的には、家兎幹細胞疲弊症モデルを作製し、培養ヒト角膜上皮細胞シートを移植し、2週間ないし4週間経過観察を行う。評価項目はフルオレセインによる角膜上皮層のin vivoにおける状態 最終経過観察時に眼球を摘出し、anti-human nuclei antibodyによる上皮細胞の染色および各種角膜上皮、輪部上皮の分化、未分化マーカー染色による移植後細胞シートの状態の検討などを行う
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次年度の研究費の使用計画 |
家兎を用いた前臨床試験を実施するための消耗品代に研究費を使用する。 具体的には、白色家兎、手術に用いる縫合糸、培養に必要なウシmedium、添加剤、増殖因子、anti-human nuclei antibodyをはじめとする各種抗体などの消耗品代である。
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