研究課題/領域番号 |
23592621
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
中村 隆宏 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (30411078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 上皮幹細胞 / 角膜 / EGFR / Lrig / 眼表面 |
研究概要 |
幹細胞を用いた角膜再生医療の臨床基盤技術開発を念頭に、角膜上皮幹細胞の恒常性維持機構を分子レベルで解明することを主目的とし、EGFRシグナル伝達系に注目し、その主要関連遺伝子であるLrig1に焦点を当てて研究をすすめた。本年はまず、既報の手法によりLrig1遺伝子欠損マウスの作成を試み、生体創出に成功した。胎生期から経時的に眼球をサンプリングして、角膜の形態発生を肉眼的・組織学的に観察した。その結果、胎生期~生後8週においては、WTおよびKOマウスの角膜ならびに角膜周辺組織(結膜、眼瞼、マイボーム腺等)における組織学的な差異は認められなかった。走査型・透過型電子顕微鏡等を用いて細胞レベルでの詳細な形態学的観察を行った結果も同様の結果であった。その細胞生物学的特徴を考察するため、上皮細胞に特徴的な細胞骨格マーカー(ケラチン等)、細胞間接着分子(ZO1, デスモプラキン等)、基底膜構成分子(インテグリン、ラミニン等)、細胞増殖関連分子(BrdU, Ki67等)、アポトーシス関連分子(Tunel法等)、幹細胞マーカー(p63、ABCG2等)等の発現をRT-PCR法、免疫組織化学染色法を用いて比較検討し、細胞分化に関する情報を集積した。生後8週以降に、KOマウスのTailでは表皮細胞の肥厚化が徐々に観察され始めた。また、角膜上皮細胞層はWTマウスと比較してKOマウスでは重層化の程度が亢進している傾向が認められた。また、我々がすでに確立している羊膜基質を用いた上皮幹細胞の3次元培養モデルを用いて、Lrig1遺伝子欠損マウス角膜上皮の増殖、分化に関してin vitroにおける機能解析の条件検討を終了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の予定通り、本年度にEGFRの主要ターゲット分子であるLrig1に注目し、研究解析の主要ツールとなる遺伝子改変マウスの創出に成功した。また、創出したLrig1遺伝子改変マウスを用いて、胎生期からの組織学的、細胞生物学的特徴の解析を終了した。また、in vitroにおける機能解析の条件検討を終了した。以上より、現在までの研究の達成度としては、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、創出した遺伝子改変マウスを用いて、より高年齢のマウスを用いた角膜における組織学的、細胞生物学的考察を加えて、Lrig1の角膜における恒常性維持機構の解明に迫る。また、Lrig1遺伝子欠損マウス角膜上皮に関しても網羅的な遺伝子発現解析を行い、in vivoならびにin vitroにおける細胞動態を把握する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費の使用計画としては、Lrig1遺伝子欠損マウスを用いた分子生物学的考察、Lrig1のin vivoおよびin vitroにおける機能解析に要する研究試薬、研究消耗品、実験動物に関するための研究費を使用する予定である。
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