研究課題/領域番号 |
23592623
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
吉野 裕顕 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90182807)
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研究分担者 |
森井 真也子 秋田大学, 医学部, 助教 (10375280)
蛇口 琢 秋田大学, 医学部, 医員 (20375281)
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キーワード | ω3系脂肪酸 / 短腸症候群 |
研究概要 |
小児短腸症候群では、しばしば重篤な肝機能障害から肝線維化、肝硬変を発症する。この致死的合併症を回避するため、肝線維化の責任細胞とされている星細胞の作用に着目し脂肪・脂溶性ビタミン代謝に関係する因子について検討した。肝臓星細胞は生理的条件下にはビタミンAを脂質滴として細胞質内に蓄積しビタミンAホメオスターシスに重要な役割をになっている。しかし、胆汁鬱滞や肝炎など病的条件下ではビタミンA脂質滴を失い、コラーゲンなど細胞外マトリックスを産生することによって肝線維化を引き起こす。 第一に、脂肪酸代謝の観点から近年腸管機能不全合併肝障害に有効であるとされているω3系脂肪酸が肝線維化を抑制する機序について、実際の臨床症例における肝組織像・臨床経過を検討し報告した(森井他、外科と代謝・栄養、2012)。小児短腸症候群症例ではω3系脂肪酸使用後に胆汁流出・肝線維化は改善し、組織学的にも活性型星細胞の減少を認めた。次いで、ω3系脂肪酸の肝線維化抑制機序について検討するために、ラット肝臓より単離培養した星細胞に対して、培養液中にω3系脂肪酸を加え、その影響を検討した。ω3系脂肪酸添加によって星細胞中の脂肪滴形成は促進し、線維化に関与するαSMAやCol1のmRNAの発現量は減少する傾向にあった(森井他、第42回日本小児外科代謝研究会、2012)。現在はさらに、短腸モデルラットを用いて、肝臓および腸管における脂質・脂溶性ビタミン代謝に関係する因子について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単離培養星細胞にたいする、ω3系脂肪酸の影響についておおむね順調に進展している。今後、実際にモデル動物を使用し、in vivoの効果について検討を進めていく予定であるが、その準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
短小腸ラットモデルにω-3系脂肪酸の静脈投与を行い対照群(ω-3系脂肪酸非投与短小腸モデル)およびコントロール群(腸管切離・再吻合を行う)についてサンプルを採取し血液生化学的な分析を行う。また肝組織への影響を病理学的手法を用いて評価する。遺伝子レベルでの影響を調べるため脂質合成・代謝に関与する遺伝子をreal time PCRを用いて定量し各群間の発現量の差を比較する。得られた結果をもとにω-3系脂肪酸が肝脂肪化や脂質代謝に影響を与えることで腸管不全合併肝障害を改善するメカニズムに関与していないかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、実験動物の購入、免疫蛍光試薬や生化学分析用試薬、制限酵素試薬購入のための消耗品費として主に使用する。さらに英文論文投稿のための英文校閲費と投稿料を計上した。また昨年度の研究はおおむね順調に進展したが、門脈血流調節因子の評価については十分に研究を進めることができなかったためこの分の研究費を次年度に繰越する事とした。
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