【目的】気管軟骨の再生には多くの細胞源を必要とする。本研究では実験動物の脂肪組織由来幹細胞(ASC)を軟骨細胞に分化させ、軟骨細胞シートとして回転培養により軟骨管状構造体を再生させることを目的とした。 【方法】家兎ACSの採取・同定にはNew Zealand White Rabbitを用いた。皮下脂肪組織を採取してコラゲナーゼtypeIIを用いて融解し、細胞分離して10%FBS+DMEM中で接着細胞を選択的に培養した。p2で細胞を分離したASCは1×106/mlの濃度にて凍結保存し、解凍して培養後に細胞シート実験に用いた。ASCは融解増殖後、トリプシン処理して1.0×106/mlの細胞密度で播種して、細胞シートを形成すべく1~4週間培養を継続した。培養液には軟骨細胞分化用培養液(DMEM+5%FBS、transferrin、dexamethasone)を用いた。 【結果】平成23年度における実験では、軟骨細胞の分化途上においてsphere形成ののち、細胞が不均一に重合した。重合した細胞は軟骨細胞シート形成以前にディッシュより剥脱した。軟骨細胞シート形成以前に脱分化を生じていたものと考えられた。次年度には、分化用培養液中にTGFβとinsulinを添加して軟骨細胞分化を継続させることで、軟骨細胞シートが形成されるようになったが、家兎耳介軟骨細胞による軟骨細胞シートに比較して強度が劣り、シリコンチューブ上では円筒形状が維持できなかった。軟骨基質の産生が不十分と考えられたため、培養液中にFGF-2、TGF-β2、TGF-β3などを添加して基質産生の増加を試みたが、シートの強度は不十分で回転培養を継続するには至らなかった。 【結論】脂肪組織由来幹細胞を軟骨細胞に分化させて、足場を用いることなく軟骨管状構造体を再生させることは困難であった。幹細胞からの気管再生においては、適切な細胞外マトリックスによる足場の存在が必要と考えられた。
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