研究概要 |
研究成果:CD1マウスを計画的に交配し、妊娠母体に妊娠7日、8日にアドリアマイシンを0.6mg/kg腹腔内投与し、食道閉鎖モデルマウスを計画的に作成した。またコントロールとして同量の生理食塩水を投与した群を比較対象として作成した。このモデルマウスを用い、マウスの食道・気管形成関与遺伝子であるShh, Foxf1の発現をWhole Mount In Situ Hybridisationにて染色を行った。引き続き、染色した胎仔をアイルランドに持参し、現地共同研究者と共にOptical Projection Tomographyを用いて遺伝子発現様式の三次元解析を行い、その発現異常は胎生期の脊索より発生するNotochordが腸管原基に異常分岐し接着することによって引き起こされるという新たな知見を得、誌上発表に至った。 また同モデルマウスは直腸肛門奇形のモデルマウスとしても知られていることから、同実験において大腸並びに肛門の発生原基である後腸においても同遺伝子発現異常をきたしていることに注目し、同様の実験を行い、やはりNotochordの異常分岐・腸管原基への異常接着により遺伝子発現異常が引き起こされている可能性を示唆し、その結果を世界に先駆け学会発表・誌上発表し研究を発展させ得た。 これら結果より、食道閉鎖並びに直腸肛門奇形を合併する奇形症候群であるVATER症候群はこれまでの多元的病因ではなく、Notochordの異常分岐という一元的病因にて説明しうる可能性を有し、本奇形症候群の概念を根底から変化させ将来的な遺伝子治療の可能性も見出しうるとの考えに至った。
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