研究課題/領域番号 |
23592636
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
山田 憲一郎 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 主任研究員 (30291173)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | BRESEK/BRESHECK症候群 / IFAP症候群 / MBTPS2 |
研究概要 |
本研究の目的は、BRESEK/BRESHECK症候群と呼ばれる稀な症例の病因遺伝子を同定することである。さらに同定さした遺伝子の機能を解明し、本症の発症機序を明らかにすることで、治療法に寄与する知見を得ることである。BRESEK/BRESHECK症候群は、巨大結腸症に魚鱗癬様皮膚症状、頭部脱毛、精神運動発達遅滞と脳・頭部・脊椎・腎の形成異常を伴うX染色体劣性遺伝の疾患である。一方、X染色体劣性疾患には、魚鱗癬、脱毛と羞明を3主徴とするIFAP (Ichthyosis follicularis with artichia and photophobia) 症候群があり、最近病因遺伝子(MBTPS2遺伝子)が明らかになった。さらにIFAP 症候群一部には、巨大結腸症、精神遅滞、脳梁欠損などのBRESEK/BRESHECK症候群の症状も見られるので、本症例のMBTPS2の変異解析を行った。その結果、MBTPS2にミスセンス変異(c.1286G>A, [p.Arg429His])を同定した。本変異はIFAP症候群のもっとも重篤な症例に見られる変異であった。以上よりMBTPS2の変異によりBRESEK/BRESHECK症候群が引き起こされることが明らかとなり、MBTPS2変異が同定される場合は、本症候群をBRESEK/IFAPと呼ぶことを我々は、論文に発表した。その後、OMIMから BRESEK Syndromeが削除されて、IFAPの中に組み込まれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、BRESEK/BRESHECK症候群の病因遺伝子を同定し、同遺伝子の機能を解明し、本症の発症機序を明らかにすることである。申請した研究計画の予定通り、今年度の目標である病因遺伝子の同定を達成することができた。また類似疾患であり別々の症候群と認識されていたBRESEK/BRESHECK症候群とIFAP症候群は、同じ病因遺伝子の異なる変異部位による表現型(症状)の多様性であることを示し、OMIMデータベース中の二つの症候群の項を統合することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本症の病因遺伝子(MBTPS2,)が同定できたので、同遺伝子の機能解析及び発症機序の解明を進める。MBTPS2は、S2P(membrane-bound transcription factor protease, site 2)をコードしており、S2Pは転写因子を切断し、活性化することで以下の二つのシグナル伝達系を仲介することが明らかとなっている。1)SREBPsを介するコレステロール合成系、2)ATF6を介する小胞体ストレス応答。本症の発症機序について、皮膚の異常はコレステロール合成の阻害により説明されるが、その他の症状の発症機序は依然不明のままである。そこで、今後は本症の小胞体ストレス応答に注目して以下の2つの研究を進める。1)培養細胞(HEK293細胞)を用いたATF6発現実験、2)患者のリンパ芽球を用いた小胞体ストレス応答の解析。また、マウスS2P抗体を作製して免疫組織染色を行い、S2Pの発現部位と症状の相関について解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究推進方策及び研究計画に基づき、以下の項目などに使用する。1)S2P及びATF6発現ベクター構築などの分子生物学的解析に必要な試薬、機器の購入2)抗体作製の受託3)組織切片作製技術者の給与
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