研究課題/領域番号 |
23592636
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
山田 憲一郎 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 遺伝学部, 主任研究員 (30291173)
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キーワード | MBTPS2 / BRESEK/BRESHECK症候群 / IFAP症候群 / 魚鱗癬 / 脱毛 / 巨大結腸症 |
研究概要 |
本研究の目的は、BRESEK/BRESHECK症候群と呼ばれる稀な症例の病因遺伝子を同定し、本症の発症機序を明らかにすることである。さらに、本研究で得られた知見は、治療法の開発に寄与すると考えられる。BRESEK/BRESHECK症候群は、巨大結腸症に魚鱗癬様皮膚症状、頭部脱毛、重度知的障害と脳・頭部・脊椎・腎の形成異常を伴うX染色体劣性遺伝の疾患である。昨年度までに、我々は本症の病因遺伝子が魚鱗癬、脱毛と羞明を3主徴とするIFAP症候群の病因遺伝子(MBTPS2)と同じであることを世界で最初に明らかにし、誌上で報告した。 平成24年度は本症の発症機序解明を目指して研究を行った。本症例には、重度知的障害と脳・頭部の形成異常がみられる。MBTPS2の脳形成における役割と、症例より同定した遺伝子変異が神経細胞に及ぼす影響を明らかにするために、マウス海馬の初代培養神経細胞を用いて研究を行った。マウスMbtps2に対するsiRNAとGFPを共発現するベクターをマウス海馬の初代培養神経細胞に導入し、免疫染色法によりGFP陽性の細胞を解析した。その結果、GFP陽性であるsiRNAを発現する細胞では、コントロールのベクターを導入した細胞に比較して、神経突起がdot状に変形している細胞数が約2.5倍増加していた。MBTPS2は、小胞体ストレスのシグナル伝達を仲介し、小胞体ストレスの解消に寄与することが報告されており、神経突起の変形が見られる細胞は、変性タンパク質の蓄積やアポトーシスが生じたと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、BRESEK/BRESHECK症候群と呼ばれる稀な症例の病因遺伝子を世界で最初に同定し、本症の発症機序を明らかにすることで、治療法に開発に関する新しい知見を得ることである。平成24年度はマウス海馬の初代培養神経細胞を用いて発症機序へのアプローチを行った。マウス海馬の初代神経培養細胞においてMbtps2を発現抑制すると、変性タンパク質が蓄積し、それに続いてアポトーシスが引き起こされていることを示唆する新規の知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に、マウス海馬の初代培養神経細胞においてMbtps2の発現を抑制すると、変性タンパク質が蓄積し、それに続いてアポトーシスが引き起こされることを示唆する知見を得たので、平成25年度は同細胞を用いてMbtps2の発現抑制によるアポトーシスを回復するような実験系や試薬を検索する。MBTPS2は、小胞体ストレス応答のシグナルを仲介し、変性タンパク質の蓄積を軽減することでアポトーシスを防いでいる。従って、Mbtps2の発現抑制を行ったマウス海馬の初代培養神経細胞では、小胞体ストレス応答のシグナルが伝達されていないと考えられる。Mbtps2は、転写因子であるAtf6aを限定分解して活性化し、核に移行させ、核内で小胞体ストレスを解消する種々のタンパク質の発現を誘導する。そこで、1)活性化型のAtf6aを発現するベクターをMbtps2の発現を抑制した初代培養神経細胞に導入し、Mbtps2の発現抑制によるアポトーシスが軽減されるか否かを解析する。2)MBTPS2とは別の小胞体ストレス応答のシグナルを増強するSaluburinalなどの試薬を同細胞に投与し、アポトーシスが軽減するか否かを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究推進方策及び研究計画に基づき、以下の項目などに使用する。 1)Atf6a発現ベクター構築などの分子生物学的解析に必要な試薬、機器の購入 2)抗体作成の受託 3)免疫組織染色標本作成技術者の給与
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