研究課題
本研究の目的は、BRESEK/BRESHECK症候群と呼ばれる稀な症例の病因遺伝子を同定し、本症の発症機序を明らかにすることで、治療法に寄与する知見を得ることである。昨年度までに、本症はMBTPS2遺伝子のミスセンス変異(c.1286G>A, [p.Arg429His])により発症することを明らかにした。MBTPS2はMembrane-bound transcription factor protease, site2(S2P)をコードしている。本タンパク質は、転写因子を切断・活性化することにより、主に「Sterol合成酵素群の発現誘導」と「小胞体ストレスによるシャペロンの発現誘導」の2つのシグナル伝達経路に関与することが明らかとなっている。本症例に見られる知的障害の病態を明らかする目的で、マウスMbtps2の発現を抑制するsiRNAとGFPを共発現するベクターを海馬初代培養神経細胞に導入して行った解析により、以下の2点が明らかとなった。1)Mbtps2発現抑制細胞では、GFPが神経細胞内にdot状に分布する細胞の割合がコントロール細胞の約2.5倍に増加していた。2)同細胞の大部分に活性型Caspase-3の発現が見られた。ヒトにおいては、MBTPS2は、ATF6を介する小胞体ストレスシグナル経路を仲介する。Mbtps2の発現を抑制した細胞では、ATF6がMbtps2の切断により活性化されないのでシグナルを伝達することができず、シャペロン(GRP78/BIP)が誘導されず、アポトーシスを起こしたと考えられる。そこで、同細胞に、シグナルを伝達できる活性型ATF6を導入した結果、アポトーシスを起こした細胞の数が減少した。以上より、本症例に見られる重度知的障害や巨大結腸症などの神経細胞の機能障害は、ATF6を介する小胞体ストレスシグナル経路の障害が病因と考えられる。従って、小胞体ストレスの軽減や、別の小胞体ストレスシグナルに関与する経路を増強することで本症を治療できる可能性がある。
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Am J Med Genet A
巻: 164(4) ページ: 924-933
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