研究課題/領域番号 |
23592637
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
林 利彦 北海道大学, 大学病院, 助教 (00432146)
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研究分担者 |
山本 有平 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70271674)
古川 洋志 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00399924)
小山 明彦 北海道大学, 大学病院, 講師 (70374486)
舟山 恵美 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10533630)
齋藤 亮 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (70507574)
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キーワード | 創傷治癒学 / ケロイド / ピルフェニドン / 線維芽細胞 |
研究概要 |
ケロイド線維芽細胞の異常増殖,周囲への浸潤を抑制することはケロイド治療に直結する。ピルフェニドンは特発性肺線維症において線維芽細胞の増殖抑制作用をもつことが明らかとされており,他の臓器や組織においても抗線維化作用が証明されつつある。 昨年までに培養したケロイド線維芽細胞に対して濃度の異なるピルフェニドンを作用させ,ケロイド線維芽細胞に対するピルフェニドンの抑制作用を評価を行い,その結果からピルフェニドンの作用を評価するために適切な濃度を設定してα-SMAやTGF-βなどケロイドで発現が増加する物質,マーカーの評価を行った。細胞増殖と細胞毒性についてMTS AssayとCell Viability Assayを行なった。αSMAのmRNA発現(RT-qPCR)などの項目においてピルフェニドンはケロイド由来線維芽細胞に対して抑制作用を持つことがデータから示された。培養液中のintact P1NP(P1CPと同様に1型コラーゲン分子が産生される際に1:1で放出される物質)濃度をRIA法によって測定し,ピルフェニドンによる抑制傾向を確認した。 本年度はTGF-β刺激に対するケロイド線維芽細胞の反応と,それに対するピルフェニドンの抑制効果について検討を行った。ピルフェニドンの線維芽細胞への作用機序がいまだ明確になっておらず,それを解明することも視野にいれた。TGF-β1が細胞膜のTGF-βレセプターに結合すると細胞質内のSmad2,3,4といったタンパクがリン酸化され,核内に移行することで標的となる1型コラーゲンなどの転写が促進される。従って,TGF-βで刺激したケロイド線維芽細胞にピルフェニドンを作用させた際,このリン酸化Smadの変化を観察することでピルフェニドンの作用の一端を解明できると考え,現在実験を継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピルフェニドンはケロイド線維芽細胞に対してαSMAなど複数の項目に対する抑制作用を示してきたが,今回Smadに注目することで具体的な作用機序について迫ることができると考えている。また,そこからどのようにSmadにピルフェニドンが作用しているかを検討していく。
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今後の研究の推進方策 |
現時点ですでにリン酸化Smadに対するピルフェニドンの一定の作用は実験データから確認されており,これが統計学的に有意であることを証明するための実験を継続中である。 ここまでに示されたピルフェニドンの作用は抗線維化薬として矛盾するところはなく,より詳細な検討を行なっていく方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記実験に必要な試薬,抗体の購入を中心とした消耗品など。
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