研究課題
最終年度の成果ピルフェニドンがケロイド線維芽細胞に対して抑制作用を示す経路の検討のために,最終年度ではTGF-β1に着目した。intact P1NP濃度においてTGF-β1投与時においてもピルフェニドンは有意な抑制作用を示しているため,TGF-β1刺激による細胞内シグナル伝達系を中心に検討を進めた。最終年度においては,TGF/Smadシグナル伝達において特定のSmad分子に対してピルフェニドンが作用している可能性を示すデータが得られている。研究期間全体の成果ケロイド線維芽細胞の異常増殖,周囲への浸潤を抑制することはケロイド治療に直結する。ピルフェニドンは特発性肺線維症において線維芽細胞の増殖抑制作用をもつことが明らかとされており,他の臓器や組織においても抗線維化作用が証明されつつある。本研究課題の具体的目的として,培養したケロイド線維芽細胞に対して濃度の異なるピルフェニドンを作用させ,ケロイド線維芽細胞に対するピルフェニドンの抑制作用の評価を行った。これまでの結果から,ピルフェニドンはケロイド線維芽細胞,正常皮膚線維芽細胞の細胞増殖抑制作用を持ち,またα-SMAのmRNA発現を抑制し,そのタンパク発現も抑制することが証明された。培養液中のintact P1NP(1型コラーゲン分子が産生される際に1:1で放出される物質)濃度をRIA法によって測定した結果,ピルフェニドンによる有意な抑制,すなわち1型コラーゲン産生抑制作用が確認された。そしてこれらのピルフェニドンによる作用にはTGF/Smadシグナル伝達が関与している可能性があることが示唆された。
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