研究課題/領域番号 |
23592640
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
李 陽成 東北大学, 大学病院, 助教 (90466566)
|
研究分担者 |
今井 啓道 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80323012)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 同種混合組織移植 / 小胞体ストレス反応 / 再建外科 |
研究概要 |
近年様々な臓器移植が行われており、顔面移植をはじめとした同種複合組織移植が注目されてきており、これまで我々はHeat Shock Protinが急性期拒絶反応に関与していることを報告してきた。また軟骨組織が拒絶反応を起こしにくいことが知られており、今回われわれはラット下肢同種複合組織移植モデルの関節軟骨に注目して研究を行った。軟骨組織においてはHE染色で移植後経時的な変化は認められなかった。またHSP70,HSP60についても同様に移植後の増加を認められなかった。しかしcaspase3陽性細胞およびTUNEL染色陽性のアポトーシス細胞は同種移植モデルにおいて経時的な増加が認められた。つまりこれらはHeat Shock Proteinが関与する免疫応答が起こらないにも関わらず、拒絶反応そのものは起こしていることが示唆される。この拒絶反応は明らかに他の組織とは異なる機構と考えられる。さらに現在レーザーマイクロダイセクション法により組織ごとにRNAを抽出しcDNAを作製、RT-PCR法による解析方法を確立し、小胞体ストレスを含めたアポトーシス経路を解析している。このことは同種複合組織移植のみならず、現在海外で臨床化されている軟骨移植についても応用できる。軟骨移植では前処理として凍結保存を前提としているが、その操作により軟骨細胞の活性が損なわれているのが実情である。よってこのアポトーシスの経路を解析することで、新しい拒絶反応抑制療法ができ、免疫抑制療法と組み合わせることでより安全で長期生着生存できる移植治療が可能となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在サンプルの作製はホルマリン標本にて終了、生化学的検査用の凍結標本で半分まで終了している。ホルマリン標本を用いた免疫組織学的検討を行い、結果としては軟骨細胞で移植日数が経過しても形態学的な変化が認められず、Heat Shock Proteinが拒絶反応に関与していないことが解ってきた。小胞体ストレス蛋白については今後行っていく予定である。また次年度におけるmRNAの解析にレーザーマイクロダイセクション法を採用した。この方法により軟骨組織からのみのRNAを抽出しcDNAを作製、RT-PCR法にて増幅、分析する方法を確立した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は抽出したmRNAの解析をRT-PCR法にて行い、軟骨組織の拒絶反応過程を解明していく。また生化学用サンプル作製を完了し、凍結サンプルから関節軟骨を削りだし、Western blot法にて小胞体ストレス蛋白の解析を行う。当初はin situ hybridization法を行う予定であったが、レーザーマイクロダイセクション法を採用した。このことによりin situ hybridizationに使用するプローブにかかるコストよりも、専用スライドガラスやプライマーのほうが安くしかも簡便に行うことが可能であり研究の推進に支障はないものと判断する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
生化学的検討用サンプルにラットを60匹使用予定。またmRNA抽出用キット、逆転写酵素、RT-PCR用プライマーおよび試薬を購入する。また凍結サンプルからのWestern blot用の抗体、メンブレン、ゲルや試薬を購入する予定である。
|