同種遊離複合組織移植は広範囲な組織欠損において主要再建法のひとつとなりつつあり、細菌では顔面移植の成功により注目されている。これまで我々はHeat Shock Proteinが急性期拒絶反応に関与している事を報告してきた。また軟骨組織が拒絶反応を起こしにくい事が知られており、今回我々はラット下肢同種複合組織移植モデルにおける関節軟骨に注目して研究を行った。 軟骨組織において同種移植後日数が経過してもHE染色にて経時的変化は認められないにも関わらず、TUNEL陽性細胞の増加を認めた。 同時に関節軟骨細胞を透過型電子顕微鏡にて観察し、それらの細胞がアポトーシスを起こしている事が確認出来た。これにより軟骨細胞が同種移植により拒絶反応を起こしている事が証明された。またcaspase3陽性細胞の増加も認められていた事から、レーザーマイクロダセクション法により軟骨組織を採取、mRNAを抽出した後PCR法を用いて解析したところ、移植後日数が経過するにつれて、caspase3の遺伝子発現量の減少が認められた。この事は軟骨組織における拒絶反応メカニズムが遺伝子レベルで起きており、caspase3を介したカスケードが進行している事が示唆される。 現在まで軟骨組織での拒絶反応の報告はなく、同種複合組織移植のみならず、海外で既に臨床応用されている軟骨同種移植においても、拒絶反応メカニズムを解明する事により、新しい拒絶反応療法が行え免疫抑制・寛容療法と組み合わせる事でより安全に長期生着生存できる移植治療が可能となる。
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