研究課題/領域番号 |
23592645
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
蛯沢 克己 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (20397459)
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研究分担者 |
佐藤 秀吉 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70528968)
亀井 譲 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10257678)
鳥山 和宏 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40314017)
八木 俊路朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00378192)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 皮膚前駆細胞 / 糖尿病性潰瘍 / 創傷治癒 / 神経再生 |
研究概要 |
本研究では、自己幹細胞源として皮膚由来前駆細胞(SKPs)を用い、糖尿性足潰瘍の根本的治療法としての可能性を検討する。 糖尿病性マウス(C57BLKS/J Iar-+Leprdb/+Leprdb)の皮膚を採取し、Toma らの方法(Nat Cell Biol. 3(9):778-84,2001.)にてマウスSKPs を得る。非接着性のフラスコにて培養を行い、第一継代した細胞を、フローサイトメトリー解析に使用した結果、nestin陽性細胞が11.1%、CD34 陰性細胞94.9%であった。 次に本細胞が糖尿病性潰瘍に与える影響を検討した。皮膚潰瘍動物モデルは、Galiano らの報告(Wound Repair Regen.12(4):485-92,2004.)に従い、糖尿病マウス(C57BLKS/J Iar-+Leprdb/+Leprdb)の背部皮膚に8mmのバイオプシーパンチにて全層皮膚欠損を2か所作成し、創収縮を予防する目的で16mmのシリコンスプリントをアロンアルファで接着し、5-0ナイロン糸にて縫合固定して作成した。 細胞移植群にはPKH26にて標識化されたマウスSKPのPBS懸濁液を、対照群はPBSを注入し、フィルムドレッシングにて創部を被覆した。創部は経時的にデジタルカメラで撮影し、定量解析にはImage Jを使用した。その結果、注入後5日目までは両群間に差は認められないが、注入後7日目から20日目までは細胞注入群で有意に創閉鎖が促進された。また創閉鎖に用した期間もコントロール群では平均21.8日であるのに対し、細胞注入群では18.3日と3日以上はやく創閉鎖が得られた。 さらに注入後21日目で創部の標本を作製した。HE所見では両群間で組織学的に明らかな違いは認められないが、蛍光染色では移植したSKPが注入部である創縁に確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
糖尿病マウスの皮膚前駆細胞は、増殖が悪く、また浮遊系培養のため、細胞回収時のロスも多い。そのため細胞解析や分化能解析、創傷治癒実験を行うにあたりサンプル数が少なくなってしまうため、予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
実験に必要なマウス皮膚前駆細胞数を確保するため、効率的な細胞の回収法を各種検討する。その後、各種細胞特性解析、神経分化能を評価する。また、皮膚潰瘍モデルでは、作成した組織標本の血管密度や神経分布などを詳細に検討する。またSullivanらの報告(Neurobiol Dis. 28(3):276-85,2007.)に従い、糖尿病マウス(C57BLKS/J Iar-+Leprdb/+Leprdb)を用いる。SKPs はマウス背部皮膚より採取し、GFP にて標識し、24 週db/db マウスの足底部、膝関節裏面、坐骨結節部に細胞を局注する。評価法として、8 週間後まで2 週ごとに神経機能評価(Sensory testing:熱刺激に対する反応速度、NerveConduction Study:電極刺激による下肢運動・感覚神経機能の定量化、神経密度(IENF):表皮層に伸びる神経線維をPGP9.5 にて免疫染色)を行い、定量化を行う。を行う。さらに最終的な神経の組織評価も行う。 次に、下肢虚血を伴う糖尿病性足潰瘍に対するSPKs 治療について検討する。臨床に即したモデルとして、Raiter A らの報告(Eur J Vasc Endovasc Surg. 40(3):381-388,2010.)の報告に基づいて行う。db/dbマウスを用いて、24 週齢で左外腸骨動脈結紮処置を行い、両側足趾潰瘍を作成する。GDP にて標識化したSKPs を潰瘍部および1)と同様に坐骨神経系を標的として片側虚血肢に局注し、両足趾の潰瘍部および神経の形態学的評価、組織学的評価を同様の方法で左右を比較する予定である。 本研究のために必要な情報収集や本研究の成果発表のため、各種学会に参加する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
皮膚前駆細胞を得るため、また皮膚潰瘍および神経障害モデル作成のための糖尿病マウス、皮膚前駆細胞の細胞特性解析や、神経分化能解析のために要する培地や抗体など、これらの実験を遂行するために必要な消耗品も購入する。また神経機能評価のため、Tail flick analnegesia meter や神経・筋刺激装置キットを購入する。 本研究のために必要な情報収集や経過発表のために、各種学会に参加する費用も計上する。
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