研究課題/領域番号 |
23592646
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内藤 素子 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30378723)
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キーワード | ケロイド / フィブロネクチン |
研究概要 |
本年度では、前年度に行った実験の、N数を増やすことを第一の目標とした。 1)ケロイド組織3例より、正常皮膚2例よりNP40含有蛋白抽出バッファー(1%NP40Tris-Cl buffer)を用いて、蛋白を抽出し、抗HtrA1,抗フィブロネクチン抗体、抗コラーゲンα2(I)抗体、抗コラーゲンα(III)抗体を用いて、western blotを行った。ケロイド組織のうち、正常皮膚に比較し、2例は、フィブロネクチン、コラーゲンI型、コラーゲンIII型のfragmentationが観察された。HtrA1のは発現は、正常皮膚に比較し、ケロイド3例とも発現が更新していた。 2)ケロイド組織1例と正常皮膚1例より、エクスプラント法にて線維芽細胞を採取し、得られた細胞に対して、1)と同様の実験を行った。その結果、ケロイド由来細胞では、正常皮膚由来細胞に比較して、HtrA1の発現が高かったが、前年度に同様の実験を行った細胞ほどは、正常皮膚との差が認められたなかった。ケロイド由来細胞では、フィブロネクチン、コラーゲンのfragmentationが観察されたが、正常皮膚由来の細胞でも若干のfragmentationが観察された。 3)ケロイド由来細胞において、前年度に構築した系を用いて、HtrA1の発現をRNAi(Stealth RNAi, Invitrogen)にてノックダウンした。ノックダウン後、84時間、96時間でサンプリングを行い、フィブロネクチン、コラーゲンI型、III型のfragmentationが減少するかについて観察したが、確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、前年度より、N数を増やして前年度の実験結果の検証を行うことが第一の目標であったが、この点においてはおおむね達成でき、前年度の結果がconfirmされた。 ノックダウンの系は、予想した結果が得られなかったが、細胞培養期間とRNAiによるノックダウン後からサンプリング時期までの時間にも調整が必要かと考えられた。この点は、次年度にて検証する。Muanieyらの方法(Muaney J et al,Matrix Biol. 29;657-63, 2010)に修正を加え、ケロイド細胞の移動性を確認する実験は、検体数の不足により実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、患者のリクルートと、検体数の確保に力を入れる。当教室ホームページにおいて、ケロイドに関する情報提供ページを設け、患者リクルートに努める。1例でも多くの検体を確保し、前年度からの結果が一貫性のあるものかを検証する。 HtraAのノックダウンにより、コラーゲン、フィブロネクチンのfragmentationが抑制されるかどうかの実験系については、培養条件の見直しにより再度検討する。 また、Muanieyらの方法(Muaney J et al,Matrix Biol. 29;657-63, 2010)にならいケロイド細胞の移動性を確認する実験は、本年度では検体数の不足により実施できなかった。来年度は、検体数を確保し、HtrA1のfragmentationによりケロイド由来細胞の移動性が増強する点について、実験を行いたい。具体的には、6穴プレートの内側に、メッシュインサートを挿入し、メッシュ内と6穴プレートでケロイド由来細胞を培養、Heat shockによる細胞ストレスを与えた後、24時間後にメッシュインサートを通りぬけた細胞をカウントする。6穴プレートは、マトリックスコーテイングなしのものと、コラーゲンやフィブロネクチンをコートしたもので検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は、消耗品と旅費に使用する予定である。消耗品の内訳は、 1)検体採取・細胞培養用試薬・プラスチック製品購入費、2)分子生物学的・生化学的実験用試薬購入品費、3)蛋白抽出・Western blot関連試薬・抗体購入費、4)qPCR関連試薬購入費、5)組織化学的実験用試薬・物品購入費、6)成果を学会等で発表するため、旅費を予定している。
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