<抗炎症作用の確認> これまで、ケロイド線維芽細胞に対する酪酸とDHAの併用による抗線維化作用を明らかにしてきたが、本年度は、感染による肥厚性瘢痕病態モデルとして緑膿菌由来lipopolysaccharide添加下皮膚線維芽細胞の実験系を新たに確立し、酪酸およびDHA、またこれらの併用による抗炎症作用(炎症性サイトカイン IL-6発現抑制)を明らかにした。抗線維化作用についてはこれまでと同様に添加後48時間に認められた。一方、抗炎症作用については、酪酸は添加直後(3時間後)から効果を示し、酪酸とDHAの併用は添加直後および48時間後において強い効果を示した。 <アポトーシス促進> 酪酸、DHAによるapoptosis促進の機序を解明するために、デスレセプター経路のアポトーシス促進因子であるFas、ミトコンドリア経路の促進因子のBaxおよび抑制因子のBcl-2、また過剰発現によりケロイド線維芽細胞にアポトーシス耐性をもたらすIGF-1Rに対する影響を解析した。酪酸はBcl-2とIGF-1R発現を抑制し、それに伴いアポトーシスを強く促進した。一方、角化細胞において酪酸による発現上昇が報告されているFasについては、本研究では酪酸により有意に抑制された。このことから、角化細胞と線維化細胞では、酪酸によるアポトーシスへの作用機序が異なることが明らかになった。DHAはBcl-2発現を有意に抑制したが、有意なアポトーシス促進は得られなかった。酪酸とDHAの混合添加では、アポトーシスおよびその関連因子において、酪酸の効果が増強された。これらのことから、DHAは酪酸のアポトーシス促進作用を高めることが示唆された。
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