研究課題/領域番号 |
23592650
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
小林 眞司 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員准教授 (90464536)
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研究分担者 |
谷口 英樹 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70292555)
前川 二郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70244449)
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キーワード | 軟骨幹/前駆細胞 / 軟骨再生 / 軟骨膜細胞 / 軟骨膜 |
研究概要 |
頭蓋・顔面領域の組織変形に対して再生医療への期待が高まっているが、長期的な形態保持性などに未解決課題がある。我々は、これら諸問題を解決するために“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”を同定し、軟骨を再生することに成功した。 我々の目的は、本細胞の培養技術を基盤として、3次元的なヒト軟骨組織を再構成し医療応用するための細胞操作技術を開発することである。具体的には、(1)“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”の特性解析の推進(2)生体内での再生軟骨の評価(3)3次元形態を有する軟骨の再構築(4)自己血清培養法の開発である。 平成23年度は(1)(2)を行い、“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”は、増殖能、多分化能、自己増複製能を有することが確認され、生体内で成熟軟骨細胞と同様に成熟軟骨細胞へと分化するだけでなく長期的な形態維持能力を有することが明らかとなった。(Proc NatlAcad Sci USA,108,2011)。 平成24年度は(3)を行い、新規スキャフォールド(pCol-HAp/ChS)を用いて3次元形態を有する軟骨の再構築を行った。“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”をpCol-HAp/ChSに播種したところ、表面に光沢を持つ軟骨様組織を再構築された。そこで,より大型の弾性軟骨組織の再構築を目指し,直径15mm高さ5mmの円柱状pCol-HAp/ChSを用いて移植実験を行ったところ,1ヶ月後には12mm X 12mm X 5mm大の弾力を有するヒト軟骨様組織が再構築された。したがって、“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”は、pCol-HAp/ChSと共に移植することでヒト弾性軟骨組織を再構築することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の目的は、本細胞の分離・培養技術を基盤として、3次元的なヒト軟骨組織を再構成し医療応用するための細胞操作技術を開発することである。具体的には、(1)“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”の特性解析の推進(2)生体内での再生軟骨の評価(3)3次元形態を有する軟骨の再構築(4)自己血清培養法の開発である。 すでに(1)(2)を終え、当該年度は(3)を行い、ほぼ予定どおりの成果を挙げることができた。3次元形態を有する軟骨の再構築を目的として、新規スキャフォールド(pCol-HAp/ChS)を用いた。pCol-HAp/ChSは,コラーゲンスポンジに,軟骨基質として知られるコンドロイチン硫酸と力学的強度を上げるためにハイドロキシアパタイト粒子を付加(incorporate)することによって得た。ヒト軟骨膜細胞を既存のコラーゲンスキャフォールド(Col)とpCol-HAp/ChSに播種した後,重症免疫不全マウスの皮下へ移植し、両者を比較検討したところ、既存のCol群では全く再構築されていなかったが、pCol-HAp/ChS群では、表面に光沢を持つ軟骨様組織を再構築された。組織学的解析からも軟骨であることが明らかとなった。そこで,より大型の弾性軟骨組織の再構築を目指し,直径15mm高さ5mmの円柱状pCol-HAp/ChSを用いて移植実験を行ったところ,1ヶ月後には12mm X 12mm X 5mm大の弾力を有するヒト軟骨様組織が再構築された。組織学的解析においても軟骨であることが明らかとなった。したがって、“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”は、pCol-HAp/ChSと共に移植することでヒト弾性軟骨組織を再構築することが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、本研究において(1)“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”の特性解析の推進(2)生体内での再生軟骨の評価(3)3次元形態を有する軟骨の再構築(4)自己血清培養法の開発を予定した。すでに、(1)から(3)を達成した。 次年度(平成25年度)は、(4)自己血清培養法の開発を行う。具体的には、“ヒト弾性軟骨幹/前駆細胞”について、10%、2%、1%自己血清含有培地をウシ血清含有培地と比較し、細胞増殖能および軟骨細胞への分化能について解析する。細胞増殖能は、コロニーアッセイ法にて各細胞を比較検討し、弾性軟骨への分化を確認するために、半定量および定量RT-PCRを用いて2型コラーゲンとプロテオグリカン、エラスチンの各種遺伝子発現を確認するとともに、組織学的検討を行う。さらに、各細胞をNOD/SCIDマウスの生体内に移植し、半定量・定量PCRおよび組織学的に評価し、臨床応用の可否を判断する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、(4)自己血清培養法の開発のために自己血清含有培地をウシ血清含有培地と比較し、細胞増殖能および分化能について解析する。自己血清以外にウシ血清含有培地と培養用培地(DMEM/F12)を使用し、軟骨への分化誘導の際にb-FGF,IGF-1などの各種成長因子を使用する予定である。 NOD/SCIDマウスは10匹×5回を予定している。軟骨を構成するコラーゲン、プロテオグリカンおよびエラスチンの定量を行い、組織学的に比較検討のために、RT-PCR用プライマー、免疫組織学的染色用一次抗体(1,2型コラーゲン、プロテオグリカン等)を使用する予定である。当該繰越金は、NOD/SCIDマウス10匹×5回のうちの一回分に使用する予定である。
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