研究課題
我々は、頭蓋顔面領域の組織欠損に対する治療のために“ヒト弾性軟骨前駆細胞”を同定し、軟骨を再生することに成功した。我々の目的は、本細胞の培養技術を基盤として、3次元的なヒト軟骨組織を再構成し医療応用するための細胞操作技術を開発することである。具体的には(1)“ヒト弾性軟骨前駆細胞”の特性解析の推進(2)生体内での再生軟骨の評価(3)3次元形態を有する軟骨の再構築(4)自己血清培養法の開発である。平成23、24年度は(1)-(3)を行い、“ヒト弾性軟骨前駆細胞”は、増殖能、多分化能、自己増複製能を有することが確認され、生体内で成熟軟骨細胞と同様に成熟軟骨細胞へと分化することを明らかにした。(Proc NatlAcad Sci USA,108,2011)。さらに、新規スキャフォールド(pCol-HAp/ChS)を用いて3次元形態を有するヒト弾性軟骨組織を再構築することを明らかにした。平成25年度は、(4)自己血清培養法の開発を行った。具体的には、10%、5%、1%自己血清含有培地(AS)をウシ血清含有培地(FBS)と比較し、細胞増殖能および軟骨細胞への分化能について解析した。細胞増殖能において、自己血清培養は10%AS群が他の群と比較して細胞倍加時間が最も短く、FBS使用群でも10%FBS群が最も短かった。すなわち、10%AS群と10%FBS群は他の群と比較して高い増殖能を示した。軟骨細胞への分化能において、10%AS群は10%FBS群と比較してやや劣るものの軟骨分化指標であるグリコサミノグリカン(GAG)を産生していた。また、アグリカンのmRNA発現を定量化した結果、ほぼ同等の発言を認めた。さらに、重症免疫不全マウスに移植し組織学的検討を行った結果、各群ともToluidine blue、Elastica van Giesonで染色され、軟骨を再生したことが示された。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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