研究課題/領域番号 |
23592655
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
水野 博司 順天堂大学, 医学部, 教授 (80343606)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 再生医学 / 幹細胞 / 創傷治癒 / アポトーシス |
研究概要 |
当初の計画通り、実験的に作成した慢性創傷モデルを用いて脂肪組織幹細胞(Adipose-derived Stem Cells、以下ASCs)を種々の量で局所に投与すること創傷治癒がどの程度変化があるかについて検討を行った。 ストレプトゾトシンによって糖尿病を誘発されたFisher344ラット(10週齢、雄)の鼠頚部脂肪組織より得られたASCsを基本培地(DMEM+10%FBS)で継代培養し、第3継代ASCsを実験に供した。別のストレプトゾトシン誘発糖尿病Fisher344ラット(10週齢、雄)に対し、背部に直径1.5cmの皮膚全層欠損創を作成後、4つのグループ(グループI:ASCs 1x105/1ccPBS、グループII:ASCs 1x106/1ccPBS、グループIII:ASCs 1x107/1ccPBS、グループIV:1ccPBSのみ)に分けて、準備したASCsに対してDiI蛍光色素で標識したのちに潰瘍周辺および潰瘍底に出来る限り均一に注入移植した。移植後は創部をフィルムドレッシング材で被覆した(各群n=6)。その後隔日で潰瘍面の状態を肉眼的に評価するべく写真撮影を実施した。また潰瘍作成後7日目、14日目、21日目および完全上皮化した時点において、潰瘍の中心部を含めるように皮膚検体を採取してHE標本を作製した。 その結果、現時点であるが、コントロール群(グループIV)に比較してASCs投与群(グループI~III)において潰瘍作成後早期から中期にかけて潰瘍面積の縮小が速いことが示されたものの、完全に上皮化するのに要した日数は大きな違いはなかった。またグループIからIIIを比較したところ、投与した細胞数と創傷治癒速度との間に大きな違いは今のところ認められていない。HE染色標本を用いた組織学的検索においては、ASCs投与群(グループI~III)において肉芽組織の増生と新生毛細血管の増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験群間における差異に関しては現時点では認められていないものの、一定の創傷治癒促進効果があることは分かった。引き続き投与細胞数の調整やより詳細な組織学的検討によって当初の予定通り研究の遂行が可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、創傷治癒促進に必要な至適細胞数の検討をすると同時に、得られた組織標本を用い、毛細血管数、伸展表皮の様式、組織中に発現する各種増殖因子の検討、アポトーシス細胞の検討を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度同様、研究費の大半は実験動物購入費、各種試薬購入費などの消耗品代に充てる予定である。成果発表のための出張費を一部計上した。
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