本研究の目的は、創傷治癒過程において脂肪組織幹細胞(Adipose-derived Stem Cells、以下ASCs)を局所投与することで創傷治癒が促進し、かつ瘢痕形成がどのような機序で減弱するのかに関し、慢性創傷モデル動物を用いて検証することである。一昨年度および昨年度の研究成果において、ストレプトゾトシン誘発糖尿病Fisher344ラット(10週齢、雄)に作成された皮膚潰瘍に対し、ASCsを局所投与した結果、①ASCs投与群においてコントロール群と比較して創傷治癒が促進されたこと、②組織学的にASCs投与群において肉芽組織の増生と新生毛細血管の増加が認めらたこと、③ASCs投与群においてCD31陽性細胞の増加が認められたこと、④TUNEL+/α-SMA+細胞がASCs投与群において散見されたことが分かった。本年度は同様に、TUNEL+/Vimentin+細胞の出現について検討した。 その結果、TUNEL+/Vimentin+細胞はASCs投与群において主に投与後4日目以降に出現したものの、投与後10日目においてのみ対象群と比較して有意差をもって増加を認めたが、それ以外の時期においては有意差は認められなかった。
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