本研究の目的は今まで使用してきた人工皮膚材料にさらに組織工学的手法を用いて免疫細胞を加えヒト皮膚モデルとし、これに対して創傷を作製して実際の皮膚における創傷治癒過程をシミュレーションして解明するとともに、その過程において培養液中に各種創傷治癒因子を付加して創傷治癒反応の変化を調べることである。 昨年度までに、成立した再生医療等の安全性の確保などに関する法律(以下再生医療法)及び再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための施策の総合的な推進に関する法律(再生医療推進法)に基づき、皮膚モデル作製プロトコールの検証並びに改訂を行った。 本年度は上記皮膚モデル作製プロトコールに基づき作製したヒト皮膚モデルにフラクショナルレーザーを照射して創傷を作成した後の創傷治癒過程について、その創傷治癒の変化についての新たな病理組織的・免疫組織化学的検索を行った。さらに従来からの病理学的手法とは直接関係のない定量PCR法、RT-PCR法を用いて各種増殖因子、各種コラーゲンの遺伝子発現評価法を確立することを試みた。 これらの成果を臨床応用するために人工皮膚モデルの改良を目的として、アミノ酸1%と水99%から構成される繊維構造を持ち、動物由来の材料や病原体が含まれず生体適合性に優れているペプチドハイドロゲルを担体として用いた培養皮膚を新たに開発して、当研究に先だつ研究課題において特許申請していた。これが本年度特許が認められたので特許登録すると共に、これを臨床応用する際の評価方法の検討を開始した。
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