研究概要 |
平成23年度の研究結果から表皮細胞はglucose濃度が0mg/dlと100mg/dlでSortilin-1, Nerve growth factor(NGF),Matrix Metalloprotease-9(MMP-9)のmRNA expressionに有意な差を生じることが明らかになった。Glucose濃度が0mg/dlという低血糖が表皮細胞に病的状態を生じるのか、或いは100mg/dlという糖尿病予備軍と呼ばれる状態が表皮細胞に何らかの影響を与え始めているのかという重要な問題が提起された。そこで本学生命倫理委員会の承認のもと(第1295号)、同意を得た患者より手術時に余剰となった組織から常法に従って表皮細胞を培養し6穴プレートへ継代した。 継代した表皮細胞は60-80%のコンフルエントにした後、無血清、無糖培地で24時間培養した。次いで0,20(低濃度),40,60(軽度低濃度),80,100(通常濃度)mg/dlの各種glucose濃度で24,48,72時間培養したうえで、Sortilin-1, NGF, MMP-9のmRNA expressionを測定した。低濃度で24, 48時間培養後のNGFは、通常濃度での培養に比べて高値の傾向がみられたが、72時間では逆転した。軽度低濃度で72時間培養した際のNGFは通常濃度と有意差はなかった。Sortilin-1は24時間の培養では濃度間で有意差はみられなかったが、48,72時間では通常濃度に比べて低濃度と軽度低濃度で低値であった。MMP-9は24時間の培養では20,40 mg/dlで高値の傾向がみられたが、48,72時間では通常濃度で有意に高い値であった。以上から表皮細胞のSortilin-1, NGF, MMP-9のmRNA expressionは低ブドウ糖環境の程度と培養時間によって変化することが明らかになった。
|