我々のすすめてきた脊髄損傷への治療研究は、現在北野病院で、脊髄損傷の患者への末梢骨髄単核球細胞移植治療が行われているに至っている。現在の研究はこの臨床応用のさきにある課題を克服するための実験計画をしている。ここ数年の課題は、慢性期脊髄損傷への有効な細胞移植方法の研究であった。この課題は、細胞移植の頻回投与で治療効果があることの報告を行った。組織学的、行動学的評価で研究に関与した。現在の課題は主に2つある。1つは、移植細胞の神経保護作用を効果的に得る方法の研究である。研究の倫理的背景などの問題で研究室のハード面の改善を行った。しかし、改善により。従来のように、顕微鏡下に脊髄損傷ラットを作成し、脳室経由に細胞移植する手術を行うことが、困難で安定した損傷効果が得にくい。安定した実験結果をうるように克服する必要がある。2つめの課題は、神経切断した場合の神経再生の研究である。脊髄損傷を片側性に行い、人工物(人工コラーゲンもしくはヘパリン含有アルギン酸)を足場に、骨髄単核球の細胞移植実験を行う実験で、材料の適合性、細胞移植の効果を評価した。その結果、ヘパリン含有アルギン酸のほうが神経再生の場とし優れていた。また、bFGFを付加することで、再生神経の髄鞘化に有効に働くことがわかった。脂肪移植の有効な手法探索と皮膚潰瘍の治療の研究を行った。脂肪移植実験はヘパリン含有アルギン酸にbFGFを含有させて、遊離自家脂肪移植を行った実験系と骨髄単核球と遊離自家脂肪とヘパリン含有アルギン酸を担体として移植した実験を行った。いずれも、単独の脂肪移植より有効な治療方法と考えられた。しかし、一部に血腫形成例があり、移植細胞の量やbFGFの量など、詳細な検討が必要。皮膚潰瘍の治療実験はヘパリン含有アルギン酸を担体に単核球細胞移植を行った実験を行った。良好な創傷治癒効果を示した。
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