研究課題/領域番号 |
23592664
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小田 ちぐさ 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50510054)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 敗血症 / アポトーシス / MAIR-I / リガンド / CD300a |
研究概要 |
敗血症は病原体の侵入に伴う過剰な炎症を主体とするが、その後のアポトーシス細胞の増加に伴う免疫抑制状態も伴うことから、その病態は複雑で未解明な点が多い。申請者らは近年、敗血症で大きな役割を果たす肥満細胞、好中球、マクロファージ上で発現する、新規受容体であるMAIR-I(CD300a)を同定した。そしてMAIR-Iが肥満細胞の活性化を制御することで敗血症の生存率に関与していること、及びアポトーシス細胞と結合することを明らかにした。本研究ではMAIR-Iを介して敗血症においてアポトーシス細胞が果たす役割を明らかにし、MAIR-Iを治療標的へと展開するための研究基盤を確立する事を目的とした。そのために、平成23年度はアポトーシス細胞上のMAIR-Iリガンドの同定を計画した。 申請者らはMAIR-Iの細胞外とIgG1Fcを融合したMAIR-I/Fcキメラ蛋白を作製し、MAIRリガンドの発現局在を詳細に解析した。その結果、MAIR-I/Fcが種々の細胞由来のアポトーシス細胞にカルシウム依存性に結合することを見いだした。よって、種を越えて保存され、かつその結合にカルシウムが必要である細胞膜構成成分の脂質タンパク質で、細胞がアポトーシスに陥る際に細胞内から細胞外へ出てくるphosphatidylserine (PS)に着目した。このPSと結合するタンパク質(MFG-E8)をアポトーシス細胞に結合させておくと、MAIR-I/Fcがアポトーシス細胞と結合できなくなることから、MAIR-I/FcがPSと結合していることが示唆された。更に、PSが直接MAIR-I/Fcと結合していることを明らかにした。また、肥満細胞上のMAIR-Iを介した抑制シグナルがPSとの結合を阻害することで見られなくなることから、MAIR-Iの抑制シグナルを伝達するのに必要なリガンドはPSであると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度はMAIR-Iリガンドの同定を計画したが実際にMAIR-Iのリガンドがphosphatidlserineであることを示すことが出来た。また、この成果を学会で発表し、論文発表も行った。
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今後の研究の推進方策 |
現在までにMAIR-I のリガンドがphosphatidylserine (PS)であることを明らかとした。PSはこれまで、eat-me signalを伝える分子として、貪食細胞上のレセプターを介してアポトーシス細胞を貪食させるように機能していると報告されている。一方でMAIR-Iは肥満細胞だけではなく、好中球、マクロファージなどの貪食細胞にも発現していることから、MAIR-IがPSと結合することによって、アポトーシス細胞を貪食する機能にいかに関与しているのか、また、貪食機能がない肥満細胞では如何に機能しているのかを明らかにする必要がある。また、MAIR-Iが肥満細胞の活性化を制御することで敗血症の生存率に関与していることが示唆されているが、これらの機能が敗血症における生存率に如何に関与しているのか、を明らかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.マクロファージにおけるMAIR-Iを介した貪食能の解析:アポトーシス細胞との共培養において、MAIR-Iを強制発現させるとより貪食するようになるのか、もしくはMAIR-I遺伝子欠損マウス由来のマクロファージでは野生型と比較して貪食が亢進するのか、を共焦点顕微鏡での観察、及びフローサイトメトリーにて解析する。2.肥満細胞におけるMAIR-Iを介したサイトカイン産生能の解析:アポトーシス細胞との共培養において、野生型、及びMAIR-I遺伝子欠損マウス由来の肥満細胞でのサイトカイン産生を比較する。また、その際にPSとの結合を介したシグナル伝達であるのかを明らかとするために、PSとMAIR-Iとの結合を阻害するタンパク質を加えてサイトカインの産生を解析する。 上記を進めるために、マクロファージに発現する他のPSレセプターのトランスフェクタントの作製(MAIR-Iトランスフェクタントは既に作製してある)、及びPSとMAIR-Iとの結合を阻害するタンパク質(MFG-E8 mutantタンパク質)の作製を行う。
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