研究課題/領域番号 |
23592666
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
相星 淳一 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (50256913)
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研究分担者 |
大友 康裕 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40176946)
小林 哲幸 お茶の水女子大学, 人間文化創成科学研究科, 教授 (50178323)
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キーワード | カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2 / 出血性ショック / 多臓器障害 / 好中球 / 腸間膜リンパ液 / 脂質メディエータ / リゾリン脂質 / アラキドン酸 |
研究概要 |
本年度のラット出血性ショック動物実験においては、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2γに対する特異的阻害剤であるR-BELを使用して、肺障害以外の臓器障害の発症機序への関与について検討した。Evans blue dye法および血液検査所見から、腸管、腎、肝の臓器障害を軽減することが明らかとなり、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2γが多臓器障害の発症機序に関与することが示唆された。また、マウス腸管虚血再潅流モデル実験において、R-BEL投与は肺障害を軽減した。さらに、腸管虚血再灌流後の循環血液量の減少や血中リパーゼの増加を有意に抑制した。来年度も継続して、他のホスホリパーゼA2と比較しながら、過大侵襲後の多臓器障害に対するR-BELの有効性を検証する。 急性炎症による多臓器障害の発症において重要な役割を演じる好中球は、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2γ酵素を有する。本研究では、好中球の生物活性(活性酸素産生、エラスターゼ放出、遊走能など)の発現に本酵素が関与するか否かについて検討した。好中球活性化物質として、fMLPとPAF(受容体依存性)、PMA(受容体非依存性)を用い、また、各種ホスホリパーゼA2に対する阻害剤として、R-BEL(カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2γ)、S-BEL(カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2β)、pyrrophenone(細胞質ホスホリパーゼA2)を使用した。これまでの結果では、R-BELは受容体依存性の刺激によって誘導される活性酸素産生、エラスターゼ放出、遊走能を完全に抑制した。しかしながら、S-BELやpyrrophenoneによる抑制は部分的か、あるいはほとんど確認できなかった。以上から、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2γが好中球の生物活性の発現メカニズムに関与することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に予定していたin vivo実験は7~8割程度まで完了した。残り2~3割の遅れは、ラット出血性ショック実験で使用する抗凝固剤を変更したことにより、再実験を余儀なくされたためである。また、本年度はin vitro研究の内容を「ヒト好中球の生物活性の発現とカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の関連性についての検討」に変更し、活性酸素産生能、エラスターゼ放出能、遊走能についての実験を予定通りに実施した。 平成24年度6月には本研究の最初の英語論文である「Lipidomics analysis of mesenteric lymph after trauma and hemorrhagic shock.」がJ Trauma Acute Care Surg 72(6): 1541-7に掲載された。 以上より、本研究全体の進捗状況としてはおおむね良好に遂行されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の動物実験では、平成24年度の未完の実験を行うとともに、細胞質ホスホリパーゼA2や分泌型ホスホリパーゼA2など他のホスホリパーゼA2も比較検討しながら、急性炎症病態におけるカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2γの役割を検証する予定である。また、in vitro研究に関しては、その他のヒト好中球の生物活性(接着分子発現、接着能、変形能など)の発現とカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2との関連性を明らかにする予定である。 論文発表については、現在、一論文は欧米雑誌に投稿、査読中で、二つ目の論文も投稿準備中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画について、東京医科歯科大学においては、従来の計画通り、試薬、器具、実験動物(ラット、マウス)の購入費とする。ただし、in vitro研究の変更に伴い、好中球の生物活性の測定に必要な物品、試薬を追加購入する可能性がある。
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