研究課題/領域番号 |
23592676
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
増田 和彦 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00381799)
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キーワード | FOKラット / 高温耐性ラット / DNA二重鎖切断 / ドキソルビシン / 線維芽細胞 |
研究概要 |
平成24年度ではFOKラット及びコントロールラットの皮膚組織から線維芽細胞の単離・培養を行い、高温環境下と非高温環境下での細胞増殖能を比較検討したが両者において差を認めなかったと報告した。 そこで平成25年度では、 1. 高温環境下と非高温環境下で差を認めなかった原因としてその実験手法に問題がある可能性を考慮して、いくつかの論文を参考にしながら、実際に実験を重ねて実験系を確立した。 2. また、FOKラットはDNAの二重鎖切断を引き起こすようなストレス環境下においても耐性の可能性が高いと考え、平成25年度においてFOKラット及びコントロールラットの皮膚組織から単離した線維芽細胞に対してDNA二重鎖切断を引き起こすと報告されているドキソルビシン処理を行い両者間での細胞増殖能の比較実験を重ねたが差があるデータと差がないデータが混在する結果となった。 3. 上記1. 2.で用いる細胞について、組織から単離した線維芽細胞を(1)そのまま比較実験に使用する、(2)細胞数を増やし-80度に凍結保存した後に実験計画にあわせて細胞を融解し実験に用いる、以上の2つの選択肢があった。本来なら(1)が望ましいと考えられたが、実験を行うたびにラットの個体組織より細胞を単離しなければならず、(2)では実験計画にあわせて細胞を使えることができるが、凍結融解による細胞障害の可能性もあると考えられた。当初は研究のエフォートの関係上(2)の方法で実験を行ったが、凍結保存してから時間が経過するに従い細胞増殖能が低下する印象を認め、(1)の方法で実験を行う必要があると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
FOKラットの個体レベルにおいては高温耐性であることが既に確立されているが、それに対して細胞レベルでも高温耐性かどうかの実験は、 1)細胞株化されている細胞と異なり組織から単離した細胞を用いるため、細胞増殖能が無限ではなく1~2回の継代で増殖能や細胞の形が微妙に変化してしまうため、実験を行うためにはその都度組織から細胞を単離培養して実験を行う必要があった 2)細胞レベルにおいても高温耐性を有するかどうかの比較するための実験系の確立のため様々な条件で実験を行う必要があった。 以上の2項目が大きな理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては組織から単離した細胞に対して熱処理を行い、熱処理後の細胞増殖能を比較実験するための実験系を確立した。そこで平成26年度では 1)その確立した実験系を用いてFOKラット及びコントロールラットの皮膚組織から線維芽細胞を単離培養し比較実験を行う。 2)肺組織、可能なら腎臓組織からも線維芽細胞を単離して比較を行う。 3)線維芽細胞を単離するラットの週齢によって差があるかどうか比較するためいくつかの週齢のラットから線維芽細胞を単離して検討する。 4)熱処理について現在は45度での熱処理を行っているが、38度から45度までの間でいくつかの温度設定での実験を行う。 以上の4項目を検討して、FOKラットが細胞レベルでもコントロールラットに比べて高温耐性能を有しているかどうか総合的に判断したい。もし高温耐性能が有していると判断した場合は、耐性能の違いが、例えばアポトーシスの過程で差が生じているかどうか、遺伝子レベルでの発現において両者間に差があるかどうか検討するためにDNAマイクアレイの実験に進む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時にはこの研究を行うためのエフォートは40%と申請を行った。しかしながら、初年度の平成23年度おいてこの研究以外のエフォートの割合が90%以上となってしまったため平成23年度は研究を行うことができなかった。研究体制を整え平成24年度より研究開始したが、当初予定の実験成果が得られなかったことが主な理由である。 最終年度において、まずFOKラットの系統維持のための飼育費用、さらにコントロールラットであるWKAHラットの購入費用、さらに細胞培養を行うための培養液関連費用、シャーレやピペット、チューブ類の購入費用、また細胞増殖能の比較実験のための試薬購入費用に使用予定である。
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