研究課題/領域番号 |
23592678
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
志馬 伸朗 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00260795)
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研究分担者 |
平位 秀世 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50315933)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 好中球 / 文化/増殖 / C/FBP β / 機能制御 / 敗血症 |
研究概要 |
感染時には好中球の需要が増加し、末梢組織からの動員とともに骨髄での造血が亢進する。造血幹細胞(Hematopoietic stem cell: HSC)レベルでの分化・増殖の促進におけるC/EBPβの役割を解析した。解析にはマウス好中球造血をフローサイトメトリーにより詳細に解析する手法を用いた。骨髄細胞を蛍光標識モノクローナル抗体で染色し、フローサイトメトリーにより好中球への分化能を保持する細胞集団をc-kitとLy-6Gの発現レベルにより、五つの細胞亜集団に分画する手法である(未分化なものから順に亜集団#1~#5)。五つの亜集団が定常状態および感染後でも正確に好中球の分化段階を反映していることは、細胞形態および顆粒タンパクの発現パターンにより確認した。 上記の手法を用い、定量的RT-PCRおよびウェスタンブロッティング法により、C. albicans感染前後での各分化段階のC/EBPβの発現レベルの変化を検討した。さらに感染前後の各亜集団の細胞数とBrdU取り込み率の変化をC/EBPβノックアウト(KO)マウスと野生型(WT)マウスで比較した。C/EBPβの発現はC. albicans感染によりすべての分化段階で亢進していた。定常状態における各分化段階の細胞数はWTマウスとKOマウスで差を認めなかった。感染後のKOマウスでは、未分化な細胞集団(#1、#2)の頻度がWTマウスに比べ有意に低く、成熟好中球である亜集団#5の頻度は高くなっていた。各細胞集団におけるBrdUの取り込み率は、感染後のKOマウスでWTマウスに比して低い傾向にあったが、有意な差は認められなかった。 以上の結果からC/EBPβは造血幹細胞・前駆細胞を含む未分化な亜集団#1および #2の増多に関与することが明らかとなった。また成熟好中球の遊走能にもC/EBPβが関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
より臨床に即した実験モデルであるcecal ligation and puncture(CLP)モデルマウスによる解析には至らなかった。敗血症モデルにおいて、刺激後に死亡する動物が予想よりやや多く、解析に必要な検体数が得られなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
HSCレベルの分化・増殖の促進に対するC/EBPβの関与が敗血症性モデルで確認できたため、他の刺激実験モデルにおける同様の検討は保留とし、成熟好中球レベルでの機能制御に対するC/EBPβの関与に関して先行解析する。これにより、感染時の好中球に対するC/EBPβの統括的な関与についての包括的な解明が効率的に行えると考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費使用計画として、まず本研究計画は申請者が使用できる施設及び設備によって実施可能なため、新規の設備備品費は不要と考えている。必要経費は主として、1)フローサイトメトリーを中心とした実験系における蛍光標識抗体、ノックアウトマウスの遺伝子型決定に必要な試薬、2)リアルタイムPCRなど分子生物学的実験を行うための試薬、3)サイトカイン測定の試薬、4)好中球機能測定のための試薬とディスポ製品、5)培養実験に必要な試薬とディスポ製品、6)試薬実験用動物(マウス)の購入費に充当させる消耗品費として、合計で1,000,000円を想定している。また、研究成果の一部を国内複数学会(日本感染症学会あるいはその関連学会)および海外学会(米国微生物学会あるいは国際化学療法学会など)で報告する予定であり、その旅費及び参加費として150,000円程度を想定している。さらに、最新の情報収集のための書籍、文献複写費などに50,000円を想定している。
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