研究課題/領域番号 |
23592678
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
志馬 伸朗 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), その他 (00260795)
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研究分担者 |
平位 秀世 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50315933)
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キーワード | 好中球 / 分化/増殖 / C/EBPβ / 機能制御 / 敗血症 |
研究概要 |
感染時には好中球の需要が増加し、末梢組織からの動員とともに骨髄での造血が亢進する。HSCレベルの分化・増殖の促進に対するC/EBPβの関与について、前年度からの研究を発展的に継続した。 好中球への分化能を保持する細胞集団を5つの集団(未分化なものから順に#1~#5)に分け、C/EBPβの発現を感染前後で比較した。ウエスタンブロッティング法によるタンパク量の解析では、C/EBPβタンパクとリン酸化C/EBPβタンパク双方が感染1日目に全集団で亢進していた。 C/EBPβの作用をさらに詳しく調べるため、C/EBPβ ΚΟマウスを用いたカンジダ血症モデルを作成した。野生型(WT)マウスでは感染後1日目に#1、#2の増加と#5の減少が認められたが、KOマウスでは感染後のそれらの変化がWTマウスよりも減弱していた。この結果はC/EBPβは未分化な細胞集団#1、#2が感染早期に増殖するために必要なことを示唆していた。しかし、BrdU取り込み率による細胞周期解析ではWTマウスで感染後1日目に認められた#1、#2でのBrdU取り込み率の上昇はKOマウスにおいてわずかに減弱している傾向にあったが、有意差でなかった。 KOマウスで#1、#2の増殖が抑制される機序について調べるため、HSC、CMP、GMPの細胞数と細胞周期の変化をWTマウスとKOマウスで比較した。WTマウスでは感染後にGMPの細胞数の増加が認められたが、KOマウスではその変化がWTより減弱していた。さらにWTマウスでは感染後にHSCおよびCMPでBrdUの取り込み率の増加が認められたが、KOマウスではHSCのみBrdUの取り込み率の増加が認められたものの、その程度はWTマウスよりも減弱していた。 以上より、感染早期のHSC、CMPでの細胞周期の活性化とGMPでの細胞数の増加にC/EBPβが必要なことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
より臨床に即した実験モデルであるcecal ligation and puncture(CLP)モデルマウスによる解析には至らなかった。また、臨床検体を用いた解析には至らなかった。敗血症モデルにおいて、HSCレベルの分化・増殖の促進に対するC/EBPβの関与メカニズムの詳細に関する追加検討を先行させたためである。
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今後の研究の推進方策 |
HSCレベルの分化・増殖の促進に対するC/EBPβの関与メカニズムの詳細に関する追加検討を先行させ、より詳細かつ深淵なメカニズム解明に至ったと考える。今後、成熟好中球レベルでの機能制御に対するC/EBPβの関与に関して解析する。これにより、感染時の好中球に対するC/EBPβの統括的な関与についての包括的な解明が効率的に行えると考える。この際、過去の検討で用いたC. albicans敗血症モデルを主体とし、CLPモデルについては応用的に位置づけることによりより確実で安定した実験計画が組めるよう配慮する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 成熟好中球レベルでの機能制御に対するC/EBPβの関与 C/EBPβKOマウスとWTマウスのそれぞれに対しC. albicans敗血症モデルマウスを作成し検討を行なう。①殺菌能の検討(a):末梢血好中球におけるミエロペルオキシターゼなどの顆粒タンパクの含有量をrealtime PCRで定量 ②殺菌能の検討(b):敗血症モデルマウスの末梢血中C. albicans量およびCLPモデルマウスの腹腔内洗浄液中の菌量の測定 ③炎症反応の程度の検討:末梢血および腹腔内洗浄液に含まれる炎症性サイトカイン(IL-6, TNFαなど)の定量 ④抗炎症反応の程度の検討:末梢血および腹腔内洗浄液に含まれる抗炎症性サイトカイン(IL-10)の定量 ⑤感染制御、炎症、抗炎症反応の総合的評価:刺激後の体重・体温変化および生存日数を評価する。 2. 臨床敗血症病態におけるC/EBPβ 集中治療室で治療を受ける重症患者のうち、敗血症/敗血症性ショックの診断基準を満たした患者群を対象として、臨床サンプルを用いた検討を行う。具体的には、説明と同意の得られた患者より、末梢血液検体を経時的に採取し、C/EBPβの発現,とりわけその上昇の臨床的意義について評価する。さらに、C/EBPβの発現と、臨床使用されている各種炎症反応バイオマーカー(CRP、プロカルシトニン、プロテインCなど)、感染症指標(細菌培養検査)、患者重症度(APACHEII score、SOFA scoreをはじめとする各種臓器機能障害指標)、あるいは生存率、ICU滞在日数、在院日数などの重要な臨床的転帰との関連について評価し、重症敗血症あるいは重症感染症時の新しい指標としてのC/EBPβの意義について検討する。
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