急性一酸化炭素(CO)中毒では、その暴露程度により頭部CT/MRI検査で大脳基底核や大脳白質・皮質に異常を認め、時には重度の障害を残すが詳細な機序は不明である。そこで申請者らは、発生現場においてパルスCOオキシメータを用いた血中CO濃度(SpCO)を測定し、暴露時間との関連を検討した。パルスCOオキシメータは当施設より25km以上離れている消防本部の救急車内の計5か所に配備し、発生現場で救急隊によりSpCOが測定可能であった症例を対象とした。測定項目は発生現場におけるSpCO、COガスの暴露時間、搬送時間、搬入時の動脈血中のCO濃度(CO-Hb)とし、SpCOに対しては暴露時間との、CO-Hbに対してはSpCO、暴露時間、搬送時間との関連性について検討した。条件を満たした症例は10例(全CO中毒患者の20%)。男性6例、女性4例で平均年齢は49.4歳であった。中毒の原因はホワイトガソリンもしくは練炭による事故7例、火災による気道熱傷2例、焼身自殺による重症熱傷1例。予後は生存が9例、死亡は重症熱傷の1例であった。高気圧酸素療法は来院から72時間以内にCT/MRI検査で異常所見を認めた2症例と発生現場で意識消失を認めた2症例に施行した。その結果、SpCOは暴露時間と有意な正の相関を認めた。一方、CO-HbはSpCOと有意な正の相関を認めたが暴露時間、搬送時間との間に相関は認めなかった。以上の結果からSpCOは発生現場におけるCO中毒の重症度を反映することが判明し、さらにCO-HbからSpCOを予測できる可能性があることが示唆された。今後、頭部CT/MRI検査で異常を認めた症例や発生現場で意識消失を認めた症例を対象にSpCOとCO-Hbの関連を調査することで高気圧酸素療法の施行決定の一助となることが期待される。
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