研究課題/領域番号 |
23592685
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
守谷 俊 日本大学, 医学部, 講師 (50267069)
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研究分担者 |
杉田 篤紀 日本大学, 医学部, 助手 (70599745)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | induced hypothermia |
研究概要 |
3年間の予定研究のうち1年目が終了した。本研究では、今まで行っていた聴性脳幹誘発電位:ABRでは、脳幹機能を示すのみで、意識の改善に必要な大脳皮質の活動を示していると考えられる体性感覚誘発電位(SEP)N20を行うことによりABR以上に症例の絞込みが行え、脳低温療法の有効症例のみをピックアップして人的物的資源の軽減を図り、さらに良好な結果を導く可能性を提言している。 脳低温療法前にABRおよびSEPを施行した症例は、大きくAグループ:ABR V波陽性およびSEP N20陽性。Bグループ:ABR V波陽性およびSEP N20陰性。Cグループ:ABR V波陰性およびSEP N20陰性。以上の3つのグループに分類された。 その後、Aグループでは、脳低温療法前に認められたSEP N20が、脳低温療法中および脳低温療法後に施行したSEPにおいて消失する症例を一部認めた。そうした症例はその後N20を認めることはなかった。B、Cグループでは、脳低温療法中や脳低温療法後にSEP N20が陽性になる症例は1例もなかった。現時点での神経学的評価からは、意識が改善したのはAグループのみの症例で、記録したSEP N20が常に認められていることが条件となっていた。 以上のことから、脳低温療法の施行前に行う電気生理学的検査において従来のABRのみの判断よりもSEPを併せて行なった方が症例の絞込みが可能であった。本研究の現時点での臨床的意義として、心停止蘇生後の患者に対する予後評価に大脳皮質機能を反映するSEPを施行することは、病院前の評価(救急隊心電図。倒れたところを発見したか。バイスタンダーの有無。推定心停止時間など)以上に効率的に予後良好な患者をセレクトできる可能性が高いことを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究症例の集積として,本年度年間院外心肺停止例が482例搬送され,現場心拍再開例が121例搬送された。呼吸・循環状態が安定している場合は71例だった。このうち,脳低温療法施行前のABRおよびSEPの記録が,治療状況や検査自体が物理的に不可能なことがあるため対象症例数は51例だった。 今回の研究では研究の対象となったABR・SEPの記録(SEPについてはその後頻回に記録した)が行えた心肺停止蘇生後の症例は51例であった。研究中に脱落した症例がなく、研究計画書における目標症例数に到達していた。神経学的評価についても、心停止蘇生後の長期的観察による意識改善の可能性は極めて低いがフォローしていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、どの時期においてもSEP N20が記録されなければ意識障害の改善は認められない結果となっている。この結果に対する症例の蓄積を今後も継続していく予定である。一方、脳低温療法施行前のSEP N20が陽性であるにもかかわらず、脳低温療法施行中や施行後のSEP N20が陰性になる症例についても出来るだけ頻回にSEP検査を行い、臨床的特徴を明らかにしていく予定である。 病院前の情報や心停止の原因がどのようなものであれ、心停止蘇生後の昏睡患者に対する電気生理学的評価が有用であることを示すことが本研究の最終目的であるが、まずは心停止のプロセスがほぼ一定な心原性心停止についてサブグループとして結果解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は本年度の症例蓄積を行い、80-100例前後となる予定である。 使用する電極そのものは、予定症例数が本年度と大きく変わらないならば、今年度使用分でまかなえている現状から、次年度特に多く必要となることはない。 症例の蓄積から得られた内容のうち、(1)心停止直後の電気生理学的検査でも意識障害改善の評価が可能であることについて、(2)途中でSEP N20が消失する症例の検討を中心に日本救急医学会及び米国集中治療医学会で発表する予定である。
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