研究課題/領域番号 |
23592685
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
守谷 俊 日本大学, 医学部, 講師 (50267069)
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研究分担者 |
杉田 篤紀 日本大学, 医学部, 助手 (70599745)
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キーワード | induced hypothermia |
研究概要 |
心停止例に対して心肺蘇生を行った結果、自己心拍再開を認めたものの昏睡状態となっている症例に対して、脳低温療法の有用性がランダム化比較試験において今世紀始めに報告された。しかしながら、研究での脳低温療法適応基準は、心停止現場や救急隊の心電図所見などによる項目で、それらの報告によると意識改善の確率は50%強程度であることが知られている。 これに対して病院到着後に行う神経学的所見から脳低温療法の適応基準を規定することも以前より期待されていたが、時間経過とともに所見が変化したり、評価者により解釈が異なることからその導入は困難であると認識されている。一方、電気生理学的検査(ABR:聴性脳幹誘発遠位、SEP:体性感覚誘発電位)は、心停止によって発生する無酸素や低酸素状態に対する神経障害や神経障害の回復時に迅速に所見が反応することから、来院時の電気生理学的所見がどれだけ予後予測に有用であるかを目的として、本研究における症例の集積を開始した。特にSEPのうち潜時20mSに記録される陰性波であるN20は、大脳皮質にその発生起源を有する。意識の中枢のひとつとして知られる大脳皮質が、意識障害であっても機能していればSEP N20の陽性所見出現が予想される。今まで現場の情報のみで行っていた脳低温療法の適応基準がSEP N20によって絞り込める可能性が考えられる。脳低温療法による人的または物的な資源を有効に利用し、脳低温療法によって効果が期待できる症例のみへの脳低温療法の応用により、効率的な集中治療室の運用が可能となる可能性が高い。 2年間の研究でSEPにおいてN20が記録される症例は、脳幹機能を電気生理学的に評価するABR V波がすべて記録されていることが判明している。さらには、SEP N20が認められる症例の2/3程度が予後良好例であることが明らかとなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究症例の集積は前年度51例であったが平成24年度は89例であった。意識障害を認めるものの呼吸や循環の障害により脳低温療法を施行する前にABRやSEPを施行できない症例は1例のみであった。症例の集積状況では、共同研究者と分担して対応するようにしている。 研究上は来院後の脳低温療法を行う前のみに電気生理学的検査を検査を行う予定であったが、実際には脳低温療法を開始した後で、特にSEP N20が記録された症例を中心に再度誘発電位の記録測定を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
意識の改善には、心停止蘇生後の意識障害を合併している場合、電気生理学的検査 SEPのN20が認められなければ、意識障害の改善は認められない結果となっている。心臓が原因で心停止の症例となった心原性心停止例とそうでない非心原性心停止例を分けて検討する必要性があるかもしれない。心停止の過程から心原性心停止は心停止が発生しても体内に酸素が残存している可能性が高く非心原性心停止と比較して良好な予後が期待できるからである。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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