われわれの現在までの知見から、敗血症における重症末梢神経炎の急性期、慢性期の発生機序は、それぞれ活動電位閾値の上昇、神経虚血‐変性が深く関与している可能性が示唆されており、本研究の目的は、敗血症の急性期で生じる活動電位閾値上昇の原因と想定される異種Na受容体サブタイプ発現を同定することであった。 実際にRT-PCRを用いた研究では神経軸策におけるNavの発現量が極端に少ないため、測定に多くの時間を要した。Nav1.1からNAV1.9の異種ナトリウム受容体サブタイプ8種類(Nav1.5を除く)を各実験群で測定したが敗血症群では対象群と発現が同程度であったものは2種類のサブタイプのみであり、発現過剰が3タイプ、発現低下が3タイプと6種類のナトリウム受容体サブタイプの発現に異常を認める知見を得た。一方、これらの変化に対するダナパロイド、アンチトロンビンの効果は改善傾向はあるが一定でなく、ナトリウム受容体サブタイプの発現の異常を介した活動電位閾値上昇の改善を説明するためにはより多くの研究が必要となるため、本研究を中断した。 第2の目的は慢性期における神経虚血-変性の初期変化として考えられる血管内皮細胞上のglycocalyxの形態学的微細構造の変化を検討することであったが、特殊な染色方法のため神経内毛細血管への染色液の浸透が難しく、平成25年度終了時点では、染色方法が完成したが染色方法の確立に多くの時間を要したため、染色方法確立の時点で中断となった。
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