研究概要 |
末梢血中のMSCsの出現は少なくその同定は容易ではない。種々の表面抗原を用いてgatingを行い目的の細胞を選択していく手法をとっている。 現在はCD45low細胞をgatingするまでは同じ手法を用いその後に核を染色するsyto16を用いて血小板と白血球分画を分ける方法で測定を行っている。すなわちsyto16+CD34+細胞は血管内皮前駆細胞を含んでおり、syto16-CD34+細胞は血小板で構成されている。syto16+CD34+細胞は次いでCD133を用いて展開しCD133+CD34+, CD133-CD34+, CD133+CD34-, CD133-CD34-の4分画に分け各々の絶対数を計測することにより格段に信頼度の高い結果が得られるようになっている。予後の良い症例では前駆細胞の血液中への出現が増加しているようである。 MSCsは幹細胞に働いてhepatocyte growth factor, insulin-like growth factor, fibroblast growth factor 2などの細胞保護因子の産生を促し、臓器保護作用を発揮すると推察されている。重症患者においてこれらの成長因子が何らかの変動を示している可能性があるためこれらの液性因子の血漿中での測定をELISAで行っている。成長因子の上昇している症例では予後が良い傾向が認められる。さらに症例を増やして検討を進める予定である。 thymosin beta4は細胞内に存在する蛋白質であり、MSCsと同様、抗アポトーシス作用、血管新生作用、細胞分化促進作用を有するのみならず、細胞構成成分であるアクチンの中和蛋白としても重要な働きを果たしている。現在敗血症患者における血中thymosin beta4の測定準備もすすめている。
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