研究課題/領域番号 |
23592689
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
馮 国剛 愛知医科大学, 医学部, 講師 (70351111)
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研究分担者 |
本多 隆 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10378052)
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キーワード | エンドトキシン / クッパー細胞 / TNFα / アポトーシス / プロポフォール |
研究概要 |
エンドトキシンによる誘導した肝障害に対して静脈麻酔薬であるプロポフォールの影響を検討することを目的として、エンドトキシン投与ラットを用いて肝臓におけるTNFα発現量の変化、肝細胞のアポトーシス発生と血清AST(GOT)、ALT(GPT)の活性について経時的検討した。エンドトキシンを500μg/kgの用量で単回大腿静脈内投与し、投与の1、3および6時間後に、肝臓におけるTNFαの発現をリアルタイムPCRとウェスタンブロット法にて測定したところ、TNFαの発現がmRNAとタンパク質レベルで急速に上昇し、1時間後に最大になり、その後減少し、6時間後ではコントロールレベルまで回復した。これに対して、プロポフォール(5mg/kg/h)の前投与はエンドトキシンによって増加したTNFαの発現を有意に抑制した。さらに、エンドトキシン投与6時間後の肝臓において肝細胞アポトーシスの増加と血清ALTレベルの上昇もプロポフォールの前投与によって有意に抑制された。抗TNFα抗体と抗CD68抗体(マクロファージのマーカー)を用いて、蛍光二重染色を行い、TNFαの発現細胞の種類と細胞数の変化を検索した結果、CD68の陽性細胞(クッパー細胞)にTNFαが発現したことと、抗TNFα抗体の陽性細胞数の増加が認められた。さらに、クッパー細胞活性化の阻害剤である塩化ガドリニウムの前投与はエンドトキシンによって増加したTNFα発現を明らかに減少させた。以上の結果から、エンドトキシンによって刺激したクッパー細胞から、遊離したTNFαは肝細胞のアポトーシス促進に重要な役割を果たしていることが示唆された。エンドトキシンによる肝障害の発生においてプロポフォールはクッパー細胞のTNFα発現を抑制したことを介して、肝細胞のアポトーシスを抑制し、肝機能を保護する可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.計画した通に、in vivoでエンドトキシンによる肝障害の発生において、ナオフェン(naofen)の発現変化および発現細胞について経時的に調べた。さらに、エンドトキシンによる肝細胞のアポトーシスの発生においてナオフェンの役割を検討し、論文を発表した。 2. In vivoでは、静脈麻酔薬であるプロポフォールはエンドトキシンによる肝障害の発生に対する影響を調べたと同時に、そのシグナル伝達を検討し、今論文を作成している。
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今後の研究の推進方策 |
1.Naofenの発現を影響する物質の検索 Naofen遺伝子プロモーターの同定はもう完成した。今年中に、naofenプロモーター遺伝子を有するベクターを用いて、naofen遺伝子の発現を影響する物質を検索する。 2.エンドトキシンによる肝障害においてプロポフォールはnaofenとその結合物質であるannexin A1の発現に対する影響を検討すると同時に、その役割をを調べる。 3.マイクロアレイを用いて、naofen overexpressionあるいはknock-downによって発現変化を受ける物質を網羅的に検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.サンプル保管用の冷凍庫 250,000円 2.代および細胞培養の物品 200,000円 3.プラスミドの精製キット、遺伝子導入試薬 200,000円 4.ウェスタンブロット用試薬・抗体、 150,000円
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